王女様のお姿

1/1
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ

王女様のお姿

 色々と噂をされている王女様。  さて、本当はどのようなお姿なのだろう。  実は王女様は17000人に一人と言われているアルビノだったのだ。  メラニンの欠乏による遺伝子疾患である。  色素が薄く、体に対しては色々な見え方をすることがある。  少しは色素があるパターンもあれば、まるで色素がないパターンもある。出方は個体差があるのだ。  ゴールドプルシアン国では多分初めてのアルビノの誕生が王女様だったのだ。  医師や看護師は勿論その知識を持っていたので、アルビノが注意しなくてはならない幼少期の肺炎で命を起こすことが多い事に最も留意した。  色素が薄いため、眼に対する日光の働きにも気をつけなければいけない。とても眩しく感じるのだ。そして皮膚が白すぎるために日焼けにも注意を払わなければならない。  日が経つにつれて、王女様は幸いなことにすくすくと育ち、アルビノに多い、運動発達障害や精神障害、筋力低下などの大きな合併症はなく、外観的なアルビノの症状が強く表れているという診断で落ち着いた。  一番心配された視力も瞳の色は薄いながらも特に問題は見つからなかった。  しかしながら、強い日差しは避けなければいけないし、肺炎になりやすかったり、癌になりやすい等のリスクもずっと背負って行かなければいけない。  王女様は、外観としては、髪はごく薄いゴールドが入ったシルバーゴールド。目は薄いブルーグレー。皮膚は真っ白であるが、元々北の寒い国なので肌は白い人が多い。故に外に出たとしても南の国の人たちの様な外観的に大きな差はあまり見られない。  ただ、先天的なアルビノなので、肌は通常の白さではない。  お顔立ちは王妃様に似て、ごく淡いブルーグレーの瞳を持つ目はぱっちりと開き、まつ毛は生まれながらにして頬に影を作る位長く豊かだ。  そして、まつ毛もこの国の国民のように金髪なのだが、銀に近い金髪なので、眼の縁取りは白く輝いて見える。小さなお鼻は形良く小さいお顔に収まり、色素が薄いため唇だけは血の色を濃く映し、まるで苺のように艶々と赤かった。  それが故、外に出るお披露目はできなかったし、王国の側近たちへのお披露目も、肺炎の危機が去るまでは控えたいと考えたのだ。  王様も王妃様もこのアルビノの王女様をとても大切に思った。    この国には言い伝えがあった。 『あるとき、白い輝きを持った娘が生まれるであろう。その娘は国に富みをもたらし、国はますます繁栄するであろう。』  と、王国の古い記述書に書いてあったのだ。これは国の歴史の授業でも習うので国民、皆が知るところなのだ。    そこで、産後からずっと同じ医師が王女様を大切に見守り、白い肌が火傷しないように。でも、お日様には当てないと丈夫に育たないのでカーテンで遮ったり、大きな日傘を作ってその下で短い時間だけ日光浴をしたりさせた。  その時には、眼を守るようにとても小さなお顔に合うように、そして、お外も見えるように紫外線を防ぎ眩しさを軽減するように科学の粋を駆使して、王女様用のサングラスを作った。    王子様は妹か弟の誕生をとても楽しみにしていたのだが、肺炎の恐れもあるので、王女様がお生まれになってから1年間はお会いいただけなかった。  ただ、王女様がアルビノという難しい体質であることを正直にお話して、聞き分けよく、1年間お待ちいただいた。  そして、やっとお会いになれる日には、医師のいう事を良く聞いて、よく消毒した上着を着て、マスクをして、手を良く洗って、お座りができるようになっていた王女様にようやくお会いになることができた。 「なんて美しいんだ。僕の可愛い妹シルビア。」  そう、ご自身もお美しいゴールド8世の王子様が金色の髪をなびかせて白く輝く王女様の両手をとると、シルビア王女様は今まで見せたことの無いような笑顔を見せて、 「ア~、ニ~タ(にーさま)。」  とお話になり、ゴールド8世の王子様も笑顔を満開に咲かせた。  王様のゴールド7世と王妃様もその様子を見て思わず微笑み、うっすらと涙を浮かべた。    シルバーに近い金髪の王女にはシルビアと名付けられ、この1年間ずっと大切に育てられてきた。  医師の手助けもあり、周りの侍女も王女様の美しさについつい甘やかしてしまうものだから、甘やかしすぎないようにと王様からは注意された。それでもこの白く輝くシルビア王女には誰もがついつい手助けをしたくなるような魅力があった。        
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!