王女様の軟禁

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王女様の軟禁

 ゴールド8世は、いつでもいう事を聞いて髪を提供させられるようにシルビア王女をお城に軟禁することにした。  そのとき、あれこれと政治に口を出し、うるさく思っていたことも含め、王女の髪を切ることに反対していた王様のゴールド7世と王妃様も一緒に軟禁してしまった。  ゴールド7世と王妃様は国益を産むシルビア王女の髪を切るのに反対していると噂を流すものが出てきたからこれ以上外貨獲得のための悪いうわさが広まらない為の軟禁。というのが理由だった。  もちろんゴールド8世の差し金だ。ゴールド8世の周囲の侍従たちも、老いてきた王様に着くよりは、後継者についたほうが得だと考えたのだろう。  王様と王妃様、シルビア王女の3人は捉えられ、お城の中とはいえ、軟禁状態にされてしまった。  そして、もともと外に出られないのに、間違っても城の外に出られないように、肩まで切ってあったシルビア王女の髪をさらに切り、丸坊主にしてしまったのだ。  そして、短く切られてしまったシルビア王女の髪だけで小物を織り、破格の値段で国外の金持ちに売ってしまった。  その外貨の獲得と時を同じくして、自分の力を見せつけたゴールド8世は20歳の若さで王位についた。    ゴールド8世は、シルビア王女が自由を味わえないようにすることと、シルビア王女の髪は貴重だったので、その後18年間髪が延びるまで、自分の目の届くところに置いておくため、ちょうどシルビア王女の為に作った温室の下に地下室を掘り、そこで暮らせるように前国王と前王妃、それにシルビア王女の3人を軟禁した。  軟禁とはいえ、一応自分の父母であり、妹なので広い地下室にはトイレとバスルームを備えた王様と王妃様の部屋、同じく、トイレとバスルームを備えた王女様の部屋と、それぞれの侍従たちも同じように部屋を与えられた。シルビア王女の研究していたマルーンの研究も、温室内だったら好きに進めて良いことにした。国のオイル精製の技術者も必要な人数派遣された。  食事はお城から地下道を通って運ばれた。何よりシルビア王女には健康でいてもらわなくては困る。質の良いシルバーゴールドの髪が何より貴重なのだ。  温室は当然、普段は光と風を通さないと花が咲かなくなるので、花を管理している庭師とシルビア王女はよく話し合って、温室が常に美しく保たれるように、管理を庭師に良くお願いした。  特に研究をしているマルーンの世話には気を配ってもらったし、マルーンの木を増やしてももらった。  普段、お日様や風を通して、温室の花のお世話をしている時間は、前国王となったゴールド7世と前王妃様が温室に出た。温室の中だけだったら散歩を許されていたので美しい花の中で、風やお日様に当たることができた。  シルビア王女が温室に出てくるときには庭師がカーテンを引き、火傷をしない様気を配った。  元々温室が大好きだったシルビア王女と庭師はとても仲が良く、王族なのに飾らない性格のシルビア王女には侍従の中にも沢山の味方がいた。  庭師にはシルビア王女と同じ年の息子がいたため、庭師は自分の跡を継がせる修行と同時にシルビア王女の気がすこしはまぎれればと、息子のローレルと王女がマルーンについて話をする時間も作っていた。  温室に出る時、侍従に会うときも、王女様は髪がないことを気にはしていなかった。 『髪はまた伸びるのですもの。』  そういって、シルビア王女の髪を見ては泣く母親を慰めた。  ただ、髪があった頭皮はこれまで保護されていたので、外からの刺激による火傷には気を付けた。白くて頬まで覆ってくれる帽子を被って庭師がカーテンを引いてくれた温室に度々出て、マルーンの精製の研究をつづけた。  次に髪を切る予定の18年は長い長い期間だった。  しかし、シルビア王女の髪が延びるまでの18年間は元王様のゴールド7世も元王妃様も無事でいられるはずだったので、シルビア王女はこっそりと味方をしてくれる侍従を増やしながら研究に打ち込んだ。  そして、その間に兄である現在の王様のゴールド8世が心を入れ替えてくれることも少しながら期待して待っていた。  髪を坊主にされてしまってから5年が経った。シルビア王女は23歳になっていた。美しさは光り輝くようにシルビア王女を包み、軟禁されてはいるが、知識の探求をあきらめていないシルビア王女の薄いブルーグレーの眼はしっかりと前を見据え、立ち居振る舞いにも威厳が出てきた。  兄であるゴールド8世は時々シルビアの髪の伸び具合を確認しに地下室に降りてくる。今や、外貨獲得のためには、シルビア王女の髪の事しか考えていないゴールド8世は日々粗野になり、酒を飲むようになっていた。  その間も今まで通り国民の髪を18年に一度切り、毎月それなりの外貨は手に入れられていたのだが、あのシルビアの髪の入った織物ほどの良い値はつかなかった。  ご自身で丸坊主にしてしまったのだから5年ではシルビア王女の髪もまだそう長くはならない。他の国民の長さと合わせるには最低でも18年かもっと長い年月が必要だろう。  そんな様子の現国王のゴールド8世を見るたび、国民の気持ちは軟禁されている前国王のゴールド7世と、前王妃様、美しいシルビア王女に移って行ったのだった。  シルビア王女がなぜ、マルーンの実のオイルの精製をそれほど熱心にしていたのか。  それは、シルビア王女は髪をとてもよく保護してくれるマルーンのオイルが、もしかしたら自分の火傷してしまう白い皮膚も保護してくれるのではないかとの思いを持ち、精製するのに余念がなかったのだ。  ある時、十分に精製出来たオイルが出来上がった。髪を洗うオイルよりも精製度がとても高く、透明でサラサラとしている。それを自分の白い肌に塗ってみた。  そして、まずはカーテンを引いた温室で、真っ白い腕の少しの範囲にオイルを塗り、塗った場所は袖をあげて過ごしてみた。初日は10分ほどで袖をおろした。  地下室に行って、オイルを塗った場所を確かめると、なんと、オイルを塗った場所の白い肌には赤味一つ出ていなくて逆にしっとりと潤いを保っているほどだった。 『もし、たくさんこのマルーンのオイルを精製できて衣服で覆えない部分に塗れば、私も外に出てみんなの役に立てるかもしれない。』  シルビア王女は自分のせいで王位を奪われた上に軟禁されている父のゴールド7世と母の元王妃には大変申し訳なく思っていたのだ。      
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