国の存続2

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国の存続2

 喪が明けた一週間後、前前国王であるゴールド7世からの宣言がゴールドプルシアン国中に知らされた。 『次期国家を治めるのは妹のシルビア王女である。』  シルビア王女をお披露目で見たものは今や皆、大人になっていた。18歳で皆の前にお姿を見せられなくなってからもう10年が経っていた。  軟禁されてからというもの、長くつらい生活の間に、もともとアルビノというご病気であったシルビア王女は亡くなり、ゴールド7世と王妃様も亡き者にされた。という噂が広まっていたため、ゴールド7世からの宣言にも驚き、また、あの美しい白い王女様がまだご存命であった事にも国民は驚いた。    しかし、次期王は早く決めて貰った方が良いし、侍従たちの噂を聞く限り、シルビア王女はアルビノ以外での健康には問題なく、マルーンの研究を進め、ご自身も日陰を作れば少しお外にも出られるようになったと言う。  さらに、その精製したマルーンのオイルで髪を洗うと、これまでのマルーンのオイルよりさらに髪質も良くなり、一度丸坊主にされてしまったシルバーゴールドの美しい髪も、この10年で大分伸びて腰位の長さにはなっていらっしゃると言う。    前前国王のゴールド7世もその王妃様も、温室での日光浴や、元々信頼のおける侍従たちのおかげで、お食事のお世話や、地下室での不便な暮らしも影を落とさず、これからシルビア王女が国政を行うときにも十分に女王となった王女様をお助けできるだけの元気はあるとのことだった。  さて、ゴールドプルシアン国では久しぶりに国民が浮き立っていた。  いよいよ、新王女様の戴冠式が行われることになったのだ。  戴冠式後にはバルコニーに出て王族の方々のお顔を本当に久しぶりに見ることができる。  国中がお祭り騒ぎの中、王女が着るにふさわしい、戴冠式用の白いドレスが準備された。どのように白いドレスでも王女の肌の白さには負けてしまう。しかし、あまり華美なものは戴冠式では使わないことになっている。  そこで、母である元王妃様は伝統的な戴冠式用のドレスをまず準備させ、ご自身の手で、透明に煌めく小さなダイヤモンドをドレスの襟もとに3列に縫い付けた。  戴冠式にはゴールドプルシアン国と織物の取引をしている沢山の国の重鎮が集まって、新しいとても美しい王女に見とれている間に儀式が終わった。  その後、冠をつけた王女が父君と母君と手を取り、日が沈み切った夕暮れのバルコニーに現れた。  バルコニーには王族のお顔がよく見えるように、下からライトが当てられ、王女様のお肌が心配されたが、マルーンの精製オイルをしっかりとお顔につけ、他の場所は手袋などで保護され、10分間、バルコニーに出てこられた。    国民は目をしばたたかせた。  昔お小さいときに見たシルバーゴールドの髪は一度、前国王に丸坊主にされたというのに、すっかり伸びて綺麗にそれも豊かな量で結われている。その上に女王となられた今、この国の金にブルーの大きなサファイアを埋め込んだ立派な冠を乗せられている。  真っ白なお顔は、控えめに縫い付けられた小さなダイヤによって光が煌めき、とても美しく輝いていた。  薄いブルーグレーの瞳は流石に明かりが眩しいのか少し目を伏せられていたけれど、美しいシルバーゴールドの長いまつ毛が頬に影を移しそれは美しく見えた。  お顔はあくまでも白く輝く様で、その中に真っ赤な唇が良く映えてとても美しい女王の誕生を、国民はしっかりと目に焼き付けたのだった。    その後ろには、父君のゴールド7世と母君が頼もし気に立っていて、 『あぁ、この国はこれで危機を脱するのではないか。』  と、誰もが心を震わせたのだった。    
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