国の立て直し

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国の立て直し

 無事戴冠式も終わり、いよいよ王女としての執務が始まった。  まずは外貨を得るための、国民と自分の髪を降り合わせた織物を、元の外貨かそれ以上で売り出すための政策を立てた。  まずは、ご自身のシルバーゴールドの腰まで延びた美しい髪を30cmほどカットし、軟禁中に王女と同じ精製オイルで髪を保護してきた父君と母君の髪も、王室としては、王女を別として初めてカットした。  そして、戴冠式に来てくださった各国の重鎮にその髪で織ったハンカチをプレゼントしたのだ。  王室の方々の髪のみで織ったハンカチである。これまで世の中に出回ったことの無いものだ。  その美しさと言ったら例えようもない。シルバーゴールドのラインが細くところどころに入った美しい金色の、とてつもなく手触りの良いハンカチ。  この国の人特有の特殊な髪を使っているので吸湿性も良く乾きも速い。そしてとても丈夫にできているのでハンカチをお配りした重鎮の奥様達がこぞってそのハンカチを使い始めた。  すると、それを見た他の重鎮の奥様や、お付き合いのある高貴なお方の奥様がこぞってそのハンカチを欲しがったため、プレゼントした以外の国からは購入したいとの希望が殺到し、最初に織った王室の方々の髪だけで織った分のハンカチはあっという間に高値で売り切れてしまった。  さて、いよいよこの国の主人公となったシルビア王女の政策の始まりだ。 18年単位で切った髪は織物の大きさとしては結構な大きさになる。しかし、それを仕立てるとなると結局は切って使っているという事を、戴冠式の時に王女は各国の重鎮に聞いていた。  そこで、髪は10年単位で切ることとした。  マルーンのオイルの精製は、軟禁されていた時に協力してもらっていた技術者たちに一つの工場を建てて、そこで引き続き大量に生産できるよう行って貰った。  そして、精製されたオイルを国民に無償で配り、これまでより髪質が良くなるよう新しく精製されたオイルで髪を洗髪するように国令を出した。  切られる側の国民もこれまでは自分でオイルを買っていたのだが、品質の良いオイルを無償でくださるという事と、髪を18年延ばすのは結構手入れも大変だったこともあって、10年単位での断髪をこころよく了承した。  実は、自分たちの髪がそれほど外貨に貢献できないと解かった国民たちの中にはマルーンのオイルで髪を洗わないものも出てきていたのだ。そうしてさらに質が落ちていたので外貨はどんどん下がる一方だったのだ。    髪質は精製オイルを10日間も使えば、驚いたことにこれまでより艶々と輝き、サラサラと流れるような髪質になった。  しばらく手入れをさぼっていた者も、やはり自分の髪質がサラサラになるのは嬉しかったし、国の役に立てるのであればと、せっせと生成されたマルーンのオイルで髪を洗った。  短い期間で美しくなった新しい髪で織物を織ってみると、長さはそれまでの半分ほどとはいえ、これまでにない手触りと光沢が認められ、ゴールドプルシアン国の織物の価格は以前の織物より高値で取引されるようになった。  髪を切る間隔が短くなったことで、織物の出荷の期間も短くなり、そして、沢山の織物が出荷されるようになった。外貨はこれまでよりも多く国に入り、国の財政はあっという間に持ち直した。  そこで、シルビア王女はマルーン畑をさらに広げる様、温室の庭師と相談して、そこで働く人も増やしてもらった。マルーンは温室で苗木を育て、畑にはある程度大きくなった木を植える。そして、実が収穫しやすいように身長より少し高い高さに保つようにした。  外でのマルーンの管理は庭師の息子のローレルにお願いした。  それによって、これまで国の中での仕事が大変になってしまったお年寄りは織物工場でも需要が増えたばかりではなく、マルーン畑での実の収穫作業という仕事を手に入れられた。男性でも女性でも自分の得意な方の作業に従事すればよかった。勿論、家でのんびりとして、髪の手入れに専念するお年寄りたちもいた。  金髪は白髪になりにくいし、白っぽくなった金髪はシルビア王女の髪ほどではなくても、金色の織物に綺麗な線を入れるので、お年寄りの髪も大層重宝された。  外貨の収入での問題は解決されたのだった。
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