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シルビア王女の結婚にむけて
外貨が落ち着き、国の中もほっとした雰囲気に包まれたころから、王女様の結婚について、ご両親も、侍従たちも、国民も皆心配をし始めた。
王女には既に心に決めた人がいた。
そう。軟禁されたときから仲の良かった庭師の息子のローレルだ。今は国で一番大切な外貨となる、美しい髪を保つためのマルーンの管理をお願いしている。
ローレルは、小さい頃から王女の悩みを聞き、王女の望みを聞き、ともに大人になってきた同士だった。
父のゴールド7世も元王妃様もこの結婚に異論はなかった。
もちろん、他の国の王子様たちからも結婚の話は出ていた者の、既に女王となっているシルビアと結婚するには自分の国を捨てなければならない。
軟禁されていた時の話を、国民はその時使えていた侍従や侍女たちから聞いていたし、自分たちが今使っている精製されたマルーンのオイルもマルーンの管理をしているローレルのおかげでできていることが分かると、特に身分など考えず、これまで、つらい思いをしてきた王女様ご自身の希望なさる方と結婚するのが一番だと考えた。
ずっとシルビア女王を診察していた医師も、外にアルビノの症状が出ているだけで、健康上は問題ないので、お子様も望めることをシルビア女王にはお伝えしていた。
シルビア女王はご自身のアルビノが遺伝してしまうのではないかと悩んだが、確率は低いと言われ、ご結婚に踏み出した。もとより前向きな王女様である。
そして、結婚するにあたって、その前に一つ、国として別の国政を立ち上げようと思っていた。
以前からとても気になっていた、他国のアルビノの人たちへの差別がいつもシルビア女王の心を痛めていた。
ご自身は北の国のお生まれなので、周囲も金髪で白い肌の人が多かったため、更に白く輝いていても特に大きな差別はなかった。
むしろ、昔からの
『あるとき、白い輝きを持った娘が生まれるであろう。その娘は国に富みをもたらし、国はますます繁栄するであろう。』
という言い伝えにより、ゴールド8世が安易な解釈でシルビア王女の髪だけを使おうとしたのに対して、今や、国民はシルビア王女がしっかりとした政策で、国を繁栄させてくれたことを知っているのだ。
それゆえ、アルビノという特殊な遺伝子の病気でも疎まれることはなかった。それに、マルーンのオイルという味方もできたことで、少しだったら外に出られるようになった。
シルビア女王は、織物の取引をしている国々に連絡をして、アルビノで苦しんでいる人はいないのか問い合わせをした。
すると、やはり、アフリカやアジアなど、元々髪や皮膚の色が濃いところで生まれたアルビノの人々は酷い言葉を浴びせられたり、恐ろしいことに、アルビノの肉が薬になると言って殺されたり、まじないに使うと言って手足を切られたりすることまであると聞いた。
そこで、シルビア女王は
『もし、よければゴールドプルシアン国で、アルビノの人たちを保護するので、希望があればいつでも来ていただくように。』
とのお触れを各国に伝えた。
『もし、ご自身の国を離れたくなければ、少しの間皮膚を保護できるマルーンという木の実の精製したオイルをお分けする。』
とのお触れも同時に伝えてもらった。
ゴールドプルシアン国にはたくさんのアルビノの人が集まった。中にはアルビノの特性である、眼が光りに堪えられない為、視力がなかったり、内臓に疾患のある人たちも多かったので、アルビノの人たち専用の病院を作り、広い温室を併設させた。そこはゴールドプルシアン国が経営し、すべての患者が無料で暮らすことができた。
その温室はかつてシルビア女王が子供の時に作られたようにアルビノの患者が出る時間には紫外線を通さない厚いカーテンをかけ、患者たちはマルーンのオイルを塗り、火傷に気をつけながらも今まで見ることのできなかった草花に触れる機会ができた。
目だけに疾患がある人も多かったので、そういう人には簡単な機械で織れる織物を覚えてもらい、生活の支援もした。
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