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イオネモールタウンは、この近辺では一番の大型ショッピングモールだ。
4階建ての巨大な建物で、3階、4階、屋上は駐車場となっている。
午後2時。
すでに3階の駐車場は満車で、4階もかなり混みあっていた。
とりあえず、適当な場所に車を止め、建物の中へと入る。
中も相当混んでいた。
さすが日曜日。
多くの家族や恋人でにぎわい、オシャレな格好をした人たちが闊歩している。
僕は妹との待ち合わせ場所に向かうべく、1階のフリーホールへと足を踏み入れた。
1階のフリーホールは待ち合わせ用や休憩用のちょっとしたスペースで、椅子や丸テーブルが並んでいる。
僕はその一つに腰を下ろし、妹の到着を待った。
ここもなかなかの混み具合だ。
そこかしこで会話を楽しむカップル。
アイスクリームを頬張る親子。
スマホをいじりながら誰かを待っている人の姿も見受けられる。
そんな中、ふと一人の女性が目に入った。
テーブル3個分先に座る、キャリアウーマン風の女性。
バリバリのスーツ姿でポニーテールが似合ってる30代くらいのきれいな女性だ。
しかし、そんなきれいな顔立ちとは対照的に、表情は暗く沈んでいた。
何か嫌なことでもあったのだろうか。
「はあ」と何度も大きなため息をついている。
ジッと眺めているのに気が付いたのか、その女性は僕に目を向けた。
「あ、やばい……」
慌てて目をそらす。
素知らぬ顔でいそいそと懐からスマホを取り出す仕草をする。
かなりわざとらしい。
ずっと眺めていたのがバレてしまっただろうかと不安になりつつも、妹へメールを送った。
『着いたぞ。今どこだ?』
するとすぐに妹から返信が届いた。
『もう中。すぐそっち行く』
待ち合わせ時間に5分も遅れている。
これが彼女だったら「可愛いな」と思えるのに、妹ともなると「早く来い」としか思えない。
不思議なものだ。
妹も妹で、きっと相手が僕だから適当に行動してるのだろう。
スマホをしまって再び女性に目を向けると彼女はまた顔を下に向け、思いつめた表情でため息をついていた。
よかった、僕が見ていたのには気づいていなかったようだ。
それにしても、落ち込みようがハンパない。
何があったんだろう。
恋人にでもふられたのだろうか。
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