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……と。
バイオリンの青年が優しい音色で「ハッピーバースデー」を奏で始めた。
かの有名な大女優マリリン・モンローが、かの有名な大統領の誕生日に歌ったアレだ。
そうか、今日はこの女性の誕生日なのか。
奇しくも僕と同じ誕生日だ。
なんだか親近感がわいてしまう。
すると、ハッピーバースデーの曲に合わせてどこからともなく一人の男が現れた。
キャリアウーマン風の女性が口に手を当てて喜びをあらわにしている。
これはもしかして、もしかする?
すると男は女性の前にゆっくり歩み寄って、大きな花束をスッと差し出した。
まさにサプライズプレゼント。
女性は嬉しそうに花束を受け取るとそのまま男性と抱き合った。
瞬間、大きな拍手が巻き起こる。
「おめでとう!」
祝福の拍手を受け、会釈する二人。
僕もまさか目の前でこんなサプライズプレゼントを拝める日が来るなんて思っておらず、心から拍手を送った。
さっきまでこの世の終わりのような顔をしていた女性とは思えない。
よかったなー。
ていうか妹、早く来い。
そう思って眺めていると、ふいにその女性と男性が僕のほうに目を向けてニヤッと笑った。
「……え、なに?」
一緒に跪いていたダンサーたちも、いっせいに僕に目を向ける。
と、次の瞬間。
またもやハッピーバースデーの曲が流れ出した。
今度はダンサーたちが僕を中心に派手に踊りまくった。
なに?
なにが起きてるの?
ハスキーな声でバラードを熱唱していた男性も、素晴らしいデュエットを奏でていた女性も、僕に向けてハッピーバースデーを歌っている。
さらにはさっき花束をもらった女性も、それを差し出した男性も一緒になって歌いだした。
こ、これはもしかして……。
想像したくはないけれど、もしかして……。
本当のターゲットは「僕」なのか!?
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