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「じゃあね、また来週」
そう言って彼女が手を振りながら別れを告げたのが一昨日の金曜日。
仕事が終わって二人で飲みに行き、そのまま駅のホームでさよならをした時のセリフだった。
僕は手を振り返しながらも「え?」と思った。
来週? 明後日じゃなく?
明後日、つまり今日は僕の27回目の誕生日。
表だって言ってはいないけれど、付き合って4年にもなる彼女は知っていると思っていた。
いや、当然知っているはずだ。
今まで、幾度となく誕生日にまつわる会話をしてきたのだから。
誰それが僕と同じ誕生日だとか。
何々が起こった日が僕の誕生日だったとか。
それなのに、そんなものすっ飛ばして彼女は「また来週」と言ってきた。
まるで、何事もないかのように。
別に祝ってほしかったわけじゃない。
お互いに記念日なんて特に気にするタイプじゃないし。
事実、クリスマスやお正月、バレンタインなんて何事もなく過ごしてきた。
365日、毎日が僕らにとってはなんでもない日なのだ。
けれども「誕生日は一緒に過ごせないけどごめんね」くらいの一言は欲しかった。
今年の誕生日は珍しくも日曜日。
彼女も休みのはずなのに。
僕はただ呆然とコツコツとヒールを鳴らして去っていく彼女の後ろ姿を眺めていた。
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