2 作文

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 先生からそんな話を聞かされて、芙海は少なからず驚き、戸惑った。  悠希からそんな作文を見せられたことはなかったし、小さかった頃に時々同じ夢を見ていたことは知っていたものの、今は収まっているものとばかり思っていた。それが、今も同じ夢のことを作文にするほど強く意識していたとは―― 「何か思い当たることでもありますか?」  表情を曇らせた芙海を見て、先生は訊ねた。  芙海は、聞いていただけますか、と前置きしたうえで、半信半疑ながら気になることがある、と話し始めた。それは、悠希の父親のことだった。  父は、今から11年余り前の2011年に東日本一帯を襲った大震災で命を落とした。  当時、身ごもっていた芙海は、かろうじて命をとりとめたものの、夫のみならず家も流され、生活のすべてを失った。同じ街の海沿いで海産物店を営んでいた実家も津波に襲われ、両親と独身の兄も亡くなってしまった。
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