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俺と笹垣が同時に驚きの声を出した。どういうことだ。俺が驚くのはわかるが、笹垣までも驚いている。そして俊二はとても困っている表情だった。
「恵里さん、初めまして。私が俊二の母親の紅葉です」
「初めまして、お母さん。イギリスから今日戻って来られたのですね。お疲れ様です」
「イギリス……ええ、まあ、そんな所ですわ。あははは」
紅葉が俊二に目をやる。
「俊二、お母さんはちょっと話があります」
笹垣も事態がわかってないようで声を出した。
「私も俊二に話がある」
「あなたはいったい……」
「あーーーお母さん、久しぶりにお会いできて嬉しいです。申し訳ないですが、三人で話があるので席を外します」
俊二が紅葉の声を遮った。紅葉も代行屋なのだろうか。何がどうなっているんだ。
しばらくすると三人が戻ってきた。三人とも疲れた様子だったが、俊二は特に狼狽えていた。俊二が俯きながら声を出した。
「遅くなりました、改めて紹介致します。イギリスから帰ってきた母親です」
笹垣は空気を変えようと元気いっぱいに話した。
「お母さん、間に合って良かった。元気そうでなによりだ!」
「お父さんも俊二も久しぶりに会えて嬉しいわ。特にお父さんはまるで別人になったかのようにかっこよくなっていて。あはは」
この状況が飲み込めない。母親も代行屋ではないのか。笹垣にさっきと同じく目配せすると笹垣も頷いた。
「申し訳ない。大輔さんと話すことがありまして」
「私もちょうど啓介さんと話したいと思っていた。ちょっと席を外すよ」
残った三人にじっと眺められながら、俺と笹垣は式場を出た。さっきと同じ場所で俺はやっと息をついた。
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