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「どういうことだ? 母親がイギリスに出張していたというのは本当なのか?」
「嘘に決まってるだろ。失踪していた母親が息子の結婚を聞きつけて来たんだ」
まさか本当の母親が来るとは、イギリスから出張で戻ってきたという嘘をそのまま受け入れたのか。なんともややこしい。しかし恵里はそのことに気づいてないようだ。
「よし。こうなったら最後までやりきるか」
「おまえならそう言うと思った。騙し通そう」
俺と笹垣は式場に戻った。ここでもしも恵里の母親が刑務所から来ていたら大変だなとぞっとしたがそんなことはさすがになかった。
五人がそれぞれ当たり障りのない話をしていた。盛り上がることは一切なく、とても結婚式とは思えない。そんな時に俊二が声を上げた。
「ところで恵里さん。肝心のことを聞いてもいいですか?」
俺が偽物だと俊二は気づいたのか。それ以外に考えらない。俺は逃げられないと思って歯を食いしばった。恵里が朗らかに応えた。
「何でしょうか。俊二さん?」
俊二が笑みを溢しながら話した。
「本物の恵里さんはどこにいらっしゃるのですか?」
「えっ」
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