虚飾に満ちた結婚式

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 俺は板倉寛治。結婚式などの式典の時のための代行屋を営んでいた。今回は立花恵里の結婚式に出席していた。事前に顔合わせはなく身内だけが集まる小さな結婚式だ。  立花の父親、立花啓介を演じるのが俺の仕事だ。本当の父親は泥棒で服役中だ。新郎の伊藤俊二に話しかけた。 「恵里がこんなに素敵な俊二君と結婚できて、親としても鼻が高いよ」 「僕もこんなに素敵なお父さんがいらっしゃる恵里さんと結婚できて幸せです!」  俊二が周りを見渡して不思議そうな顔をした。 「お母さんは今日はいらっしゃらないのですか?」 「家内は病気で入院中で出られない。恵里を宜しくと言っていたよ」  恵里の母親も泥棒で服役中だったが代行屋を雇う金がなかった。それで恵里と話し合った結果、母親は病気で入院中ということで話を合わせることになった。 「ところで俊二君、ご両親はどこにいらっしゃるのかな?」 「ご紹介が遅れましたね。もうすぐこちらに着くとのことです」  恵里や俊二と差し障りのない世間話をしている所に声が響いた。背広姿のきちっとした人が会場に入ってきた。 「遅れて申し訳ない。私が俊二の父親の伊藤大輔です。初めまして、恵里さん」 「初めまして、お父さん。立花恵里です。宜しくお願い致します」 「こちらが恵里さんのお父さんかな? あっ……」 「あっ……」  俺は俊二の父親、伊藤大輔と名乗った男と面と向かってわかった。相手もわかったようだ。お互いライバルの代行屋だと。
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