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4.はらぺこサキュバスと性欲の強い男エルフと路地裏で
昨日までのことを思い出す。わたし、シルキィは万年お腹をすかせた要領の悪いサキュバスで、すごく強い精気を駄々もれにしているエルフのレイモンドさんを誘って関係を持った。あまりに上質な精気をいっぺんに吸ったためにお酒に酔ったような状態になって、レイモンドさんの申し出をそのまま飲み、サキュバスの契約を結んでしまったのだった。
「わ、わたし、本当に契約を結んじゃったんですね……」
「今更何を言ってるんですか? ノリノリで契約行為をしたじゃないですか」
宿の一階の食堂で朝ご飯を食べながら、レイモンドさんはにこにことわたしを見ている。
「ちょっとエルフの旦那。うちはあいまい宿じゃないっていつも言ってるだろ。その子が泊まった分もしっかり取るからね!」
「あはは……ごめんなさいおかみさん」
レイモンドさんの言う通り、はらぺこの私と性欲の強い男エルフのレイモンドさんはおあつらえ向きなのかもしれない。だけど。普通の人間だったら短時間で吸い尽くして終わりの契約が、長命種のエルフの、しかも底なしの精気を持っているレイモンドさんではいつまでも終わらない可能性がある。例えば、この先二人が喧嘩でもしてしまって離れ離れになっても契約は切れないのだ。そして、サキュバスの契約とは、本来だったら百戦錬磨のサキュバスが相手を手玉にとって結ばせるものなのだ。なぜかと言うと、体に流れ込んでくるのは精気だけじゃなくて、快感もいっしょに流れ込んでくるから。快感をコントロールできるようになるまで本来サキュバスは不特定多数から精気を取るものなので……。
「この先わたしは、この人がどこかで気持よくなったら所かまわず一緒に気持ちよくなる体になってしまったということ……ああっ」
「何ブツブツ言ってるんですか? ご飯、食べませんか?」
「食べます! 食べますもん!」
パンとたまごの朝ご飯をやけくそ気味に頬張るわたし。精気とは別に、ご飯もぜんぜん食べるサキュバスです。
「シルキィ君、食事をするということは、君は仕事をしてお金を得る必要があるということですよね。普段は何を?」
「んむ……一応、冒険者としてギルドに籍を置いてます、弱いから薬草集めとか害獣駆除とかしかしてませんけど……」
「ということは、少しは戦えると言うこと?」
「種族の特徴として、隠密スキルと幻惑魔法が使えるので、バリバリとは言わなくてもちょっとは戦えないことも、その、ないかな? ってくらいで……」
「そうですか。私はダンジョンマッピング師の仕事をしています」
「ダンジョンマッピング師……そうなんですね」
この世界では、人間の世界と、わたしたちサキュバスのいるサキュバス界を含む異界が存在していて、その均衡が崩れたところにダンジョンが自然発生することがある。ダンジョンは歪みが起こる度に生き物のように成長して拡がっていくので常に新しい地図を作る必要があり、ギルド所属のダンジョンマッピング師がそれを担っているのだけど、レイモンドさん、ダンジョンマッピング師だったんだ……。
「私たちは昨日契約を結びました。だからシルキィ君、君にも私の仕事についてきて欲しい。私の、お弁当として」
「はっ?」
今、この人わたしのことお弁当って言った?
「もちろん、君にとっては私が君のお弁当になるわけですけどね」
「ちょちょ、わかりません。どういうことですか」
慌てて問いただす私にレイモンドさんはちょっと困った顔をした。
「ここで長々話すのはちょっと……歩きながら話をしませんか」
町の中を二人で歩く。身長の高いレイモンドさんの足はすごく長いので一歩一歩が大きく、とても速い。やっとこ追いつこうとする私に気付いて、レイモンドさんは歩く速度を落としてくれる。
「私の性欲がものすごく強いのは昨日わかったと思いますが……」
「あ、はい。とてもよく……」
わかったというよりわからせられた。インキュバス並みの底なしの性欲をレイモンドさんは持っている。昨日のことを思い出すだけで、淫紋のあたりがじわりと疼いた。
「ダンジョンに潜ると数日は出てこれません。その間私はこの性欲の解消を冒険者仲間に何とかしてもらうか、最悪モンスターを襲うことで何とかしてきました」
うわ……モンスターを強姦する美エルフ、絵面がすごそう……。
「えっと、自分で慰めるのではだめなんですか?」
「私、それだと高めるのにすごく時間がかかるので宿とかならまだしもダンジョンではちょっと厳しいんですよ。それでね、いつも相手にしてくれる冒険者仲間が捕まるわけでもなし、生きてるモンスターを無傷で襲える時もそうそうないので数日に一回地上に戻って娼館に通うことでなんとかしてきたんですが、昨日出禁になってしまったのでそれもできなくなってしまって。君がお弁当としてついてきてくれるととても助かるのです」
本当に困っている、という顔をして足を止めると、レイモンドさんはしゃがんで私に視線を合わせた。ううううう!! 顔が、良すぎる!! この人、女を顔でごまかすことを知ってる!!
「お、お弁当って。言い方。ダンジョンマッピングのお手伝いとして行くなら、えっと。やぶさかではない、です……」
若草色の瞳に射すくめられて、わたしはスカートの裾を握ってもじもじして答えた。そんな顔でお願いされて、断れるわけないじゃない……。さっきから淫紋がずくずくと疼いて、そしてきっとレイモンドさんにもそれは伝わってると思う。
「シルキィ君……」
「レイモンドさん……」
「君の仕草がかわいいので、興奮しました。早速『仕事』をしていただけますか?」
ほんとはどこに向かってたのか把握せずについてきていたけど、私は今路地裏に連れ込まれて煉瓦の壁に押し付けられていた。レイモンドさんの体が大きいので、誰かに見つかったとしてもわたしの姿はきっと見えない。
「あまり時間もありませんし、手早く済ませます」
「あっ……、はい……♡」
身体を持ち上げられ、レイモンドさんの膝でぐりぐりと足の間を刺激されてわたしは下着を濡らした。顎を指でつかまれて、唇を奪われる。
「んむ、ふっ……んちゅ……♡」
埃っぽい路地裏に湿った音が響く。舌を絡められるだけで、わたしの体がずくずくにだらしなくなっていくのがわかる。
「ん、ぷ、はぁ……♡」
糸を引いて唇が離されたときには、わたしの準備はすっかりできていた。
「あ♡ んんんむぅふぅううぅ……♡♡♡」
長いストロークに声を上げそうになって、わたしのなけなしの理性がそれを押しとどめ、レイモンドさんのマントの肩布を噛んでこらえた。
「っく……慣らしてないから……昨日より狭いっ……♡」
「んっ♡ んんっ♡♡ んふぅううぅん♡♡♡」
激しく突くことをせず、レイモンドさんはゆっくりゆっくりわたしの中をこね回すように動く。ああ……そんなに優しく責められたら女の子の体はたまんないよ……っ♡
「んは……もっと……レイモンドさんも……気持ちよくなって……♡♡ 淫紋で、伝わる、からっ♡♡」
「っ……♡ シルキィ君、私、昨日より気持ちいいです……入れてるだけなのに……これが、契約者同士のまぐわい、なんですねっ……♡♡♡」
「揺さぶって……♡ わたしの体、揺さぶってくださいっ……♡♡♡」
「喜んでっ♡♡♡」
どっ…………すんっっっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡
「ッッ♡♡♡ ~~~~~~~~~~~~~~ッッッッ♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
突然抱え上げられた体が少し落とされ、レイモンドさんの先端がわたしの奥を突きさすように突いた。目の前がチカチカパチパチして、私は声にならない悲鳴を上げながら抱えられたままの足をバタバタと暴れさせ、目の前の大きな体が纏うマントを握りしめる。
「ッ♡ ッ♡ ッ♡ オ゛ッ♡ これらめっ♡ ちゅよいのくるっ♡♡ こんなの覚えたらっ♡♡♡ 覚えたらっ♡♡♡」
わたし、体だけでレイモンドさんのこと好きになっちゃう♡♡♡♡♡♡♡♡♡
「はむっ……!」
「~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
絶頂の叫び声は、レイモンドさんの唇に全部飲み込まれた。
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