必要のない重ね着

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「松田がもらったチョコとか手紙とかオレ達の前でひろげて見せてさ。キミからもらったチョコに書いてある名前見て、名前負けだな、なんてひどい事言ってたけど」 ・・やっぱり・・かわいくないって思われて・・嫌われてたんだ・・ 「オレは良い子だと思ってたよ」  深い穴に突き落とされて恨み節を呟いた後に聞こえてきたその言葉・・ 驚きのあまり須藤さんの顔に視線を突き刺した。 「よく一人で校庭の花壇に水やりしたり飼育小屋の掃除も一人でやってたよね?うさぎにエサあげて、フンの片づけもして。えらいなって」  寂しい時、花壇の花に水をやったりうさぎにエサをあげたりしてるとなんだか元気をもらえる気がして、一生懸命世話をした。  その姿を見ていた人がいた。えらいなって思いながら見てくれてる人がいた。  その人と大人になって出会うなんて嬉しい偶然ではあるが、あの時の私の姿も知っていると思うと恥ずかしさに心が震えた。
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