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第99話 天神様は何処までも
あの子達は、無事だった。
元の……生活にも戻れそうだ。
「……よかった」
改めて、トビトの『闇霧』をまとい……私達は、部屋の隅で彼らの様子を見ていた。
国王らしき装いに身を包んだ、温泉での狐耳の男は……レインを抱きしめ、フェアリーらの願いも聞き届けた。
ならば、ここにもう心残りはない。
開いたままの窓からそっと出て……飛翔を使い、ひとまず宿屋へ向かうことにしたよ。
「……あれでよろしかったのでしょうか」
トビトは、飛翔しながら私に声をかけてくれた。
「うん、いいんだ」
聖樹石も無事に送れた。
フェアリーらも、狂気から解放された。
本来なら、王族との接触は良くないとされていたらしいが。これ以上……間違った方向に行くより、ずっといい。
であれば、あのような形で国王と会う方が良かったのだ。
『ぼ……く、らは、ぼくら?』
フータも飛びながら、落ち着いた様子で声をかけてくれた。泣き跡はないが、私の側からは離れようとしない。私の……怨霊化した姿を見たからだろう。
撫でてやりながら、私は頷いた。
「そう、僕らは僕ら」
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