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翔也視点1
「助けて!」
俺がインターホンに出るなり、訪問者は叫んだ。
ひいおばあちゃんの代からあるというこの家のインターホンに、カメラ機能はなく、訪問者はスピーカー越しの声で判断するほかない。
声だけで訪問者が誰か認識できなかった俺は、来訪者が誰だか分からないまま玄関の鍵を開けようとしているわけで、今思えば、なんとまあ不用心な行動であった。
しかし、それほど来訪者の声が緊急性を帯びていたのも確かであり、慌てて玄関へと走る俺の頭の中では、来訪者の叫び声がこだましていた。
玄関のドアを開けると同時に、来訪者は家の中に飛び込んできた。
彼女は俺を押しのけるがごとく家の中に入ろうとする。
ずんずんと、来訪者に押されるようにして自分の家の中に収められていく俺は、傍から見れば、まあなんとも間抜けに見えたに違いない。
転ばないように、そして家主である俺を遠慮なく押してくる彼女を潰さないように、後退した。
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