タビのはじまり

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そう、街外れのだだっ広いだけの草原。 こんな所を歩くのは、私のような放浪者か、せいぜい出稼ぎに来る途中の村人くらいだろう。 じゃあ、なぜこんなところに教科書を? 魔法とはいえ、ここまで遠く飛ばすなんて。 どこか遠くに捨てたかったのかもしれないが、それなら燃やした方が早いし、何より物が残らない。 勝手に理由を考えていると、私はふとあることを思い出した。 サイリーナ・アルディー。 もしかして隣街の名家、アルディー家の子じゃないか? そういえば前に隣街に行った時、街の人が噂をしているのを聞いたことがある。 もしそうだとしたら、ますます不思議だ。 そんな名家の子の教科書がなぜこんなところに? 僻み、妬みそねみで盗られたのか? いや、それにしては綺麗すぎるしな。 などと、いくら頭の中で想像を膨らませたところで、分かるわけもない。 私は近場の岩に腰掛け、再び教科書を眺めた。 うーん、何度見ても立派な書物だ。 このまま捨てるには、あまりに惜しい。 じゃあ、この教科書はどうしようか。 私が拝借したっていいのだが、旅の荷物になるだけだし正直いらないな。 んー、なら古本屋に売り飛ばすか? いや、それもきっと大した額にはならないだろう。 第一、持ち主の分かっているものを売ってしまうなんてさすがにしのびない。
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