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予想外の依頼
また長い廊下を進み、私は食堂に通された。
見たことのないような長さの食卓に、繊細な柄のテーブルクロスが敷かれ、高級感が漂っている。
夫人とサイリーナ嬢はエプロンを付け、すでに着席していた。
早い。
「タビ様、こちらへどうぞ」
召使いにうやうやしく椅子を引かれ、私はそっと用意された席につく。
目の前には2人。
非常に緊張する。
私が座るとすぐに1品目の料理が運ばれてきた。
白く丸いお皿に、ちょこんと何かしらのムースがのっている。
あ、この大きなお皿に余白のある感じ。
1回行ったことのある高級料理店と同じだ。
いかにも庶民的な感想を抱いたことに、私は少し悲しくなる。
あっているかどうか分からないテーブルマナーを実践し、私はムースをちびちびと食べ進める。
「タビさんは、どのくらい旅をされているの?」
ムースが3分の1ほどなくなった頃、夫人が話しかけてくれた。
「うーん、7、8年くらいですかねぇ」
「あら、長いのね。どこか目指しているところが?」
「いいえ。たださまよっているだけです」
旅に出たのは、ちょうどサイリーナ嬢の年くらいだったな。
なんて思い返し、私は1人感傷的な気分に浸る。
すると彼女はそんな私の様子をうかがうように、口を開いた。
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