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「実はね、娘の代わりに課題を進めてくれる人を探しているの」
「……課題、ですか?」
私が問い返すと、夫人は首を縦にふった。
んー、家庭教師じゃなくて?
一体どういうことだろう。
私は疑問に思いながら、彼女の次の言葉を待った。
「そうなの。というのもサイリーナは日々パーティやお見合い、名家の方々への訪問で忙しいの」
「そうなんですか」
「学校こそ通えてはいるけれど、とにかく課題をする時間がないの」
さっき召使いから聞いたのだが、確かに、サイリーナ嬢の通う学校はいわゆる名門校で、勉学に励む少年少女たちが集っているイメージだ。
それゆえ、課題やテストもきっと多いのだろう。
「サイリーナには、悪いと思っているのよ。でも、彼女は女の子ですし、お家のことも大切なの」
ね?と夫人はサイリーナ嬢に同意を求めた。
サイリーナ嬢はそれに静かに頷く。
「もちろん、課題を行っていただける間は、衣食住全てこちらで提供いたします」
夫人はどう?と私に問いかけた。
私は動揺し、フォークを落としそうになる。
1泊のみならず、半永久的にこの豪邸に住めるのか?
それは嬉しいけど、流石に全てが上手くいきすぎて……。
「どうかしら?タビさんさえよければなんだけど」
困惑する私に、夫人はそう柔らかーく答えを迫る。
「はい、喜んで。精一杯取り組ませていただきます」
私は二つ返事で、この提案を受け入れることになった。
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