君に恋する青い月【特別編の番外編⑧】樹の腕時計

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 店内に山村と竹中の声がまた大きく聞こえ始めたので、再び奥の部屋から店長が顔を覗かせた。 「ちょっと、また声が大きいんだけど」 「でも!帰ったらもう返さなきゃですよ。お昼休憩の時に時計屋さんで電池交換お願いしてきたんです」  必死な顔で汐里が言うので、岡野はそちらを見た。  腕には大きなメンズっぽい時計が付けられている。  それをじっと岡野が見つめているのに汐里は気が付き、無意識にパッと手を後ろに隠した。 「林さん、それ」 「か、彼氏の時計です」  岡野の背景が一瞬のうちに黒塗りになり、ガラガラピシャーンと雷が落ちたような効果音が聞こえた。  だが何にも言わずに汐里を見て立っているばかり。 「て、店長?」 「帰ったら、返すっていうのは?」  ふいにぽそっと岡野が言ったので、汐里は恐る恐る答えた。
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