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店内に山村と竹中の声がまた大きく聞こえ始めたので、再び奥の部屋から店長が顔を覗かせた。
「ちょっと、また声が大きいんだけど」
「でも!帰ったらもう返さなきゃですよ。お昼休憩の時に時計屋さんで電池交換お願いしてきたんです」
必死な顔で汐里が言うので、岡野はそちらを見た。
腕には大きなメンズっぽい時計が付けられている。
それをじっと岡野が見つめているのに汐里は気が付き、無意識にパッと手を後ろに隠した。
「林さん、それ」
「か、彼氏の時計です」
岡野の背景が一瞬のうちに黒塗りになり、ガラガラピシャーンと雷が落ちたような効果音が聞こえた。
だが何にも言わずに汐里を見て立っているばかり。
「て、店長?」
「帰ったら、返すっていうのは?」
ふいにぽそっと岡野が言ったので、汐里は恐る恐る答えた。
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