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「あ、彼氏から借りたので、返さなきゃなんです。私のは電池切れで、朝出がけに玄関で貸してくれて」
「玄関で」
「はい」
岡野は、確認するように言った。
黙りこくっている空気が重苦しい。
「な、なんで、玄関で?」
岡野が真顔で聞いてくる。
その場にいた全員が、圧を感じた。
「……住んでるので」
岡野は今度は返事をしない。
この何とも言えない空気感に我慢が出来なくなったのか、山村が一気に喋り始めた。
「林さん、彼氏と一緒に住んでるんですって。朝、電池が切れちゃって、貸してくれたんだそうですよ」
「えっ」
山村の言葉を聞いた岡野が硬直しているのを見て、汐里もまた固まってしまった。
しーんとしている空間を、山村は黙ってくるりと方向を変え、そのまま事務所へと戻っていった。
と思った瞬間。
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