君に恋する青い月【特別編の番外編⑧】樹の腕時計

1/7
前へ
/7ページ
次へ
 バタバタと慌ただしく動き回る朝。  汐里は樹の食事を作り、用意した自分のお弁当をカバンに入れ、壁に掛かった時計を見ながら出勤の準備をしていた。  昨日は予定外に夜更かししてしまい、目覚ましが鳴ったのに三十分ほど寝てしまっていたのだ。  あとから起きてくるはずの樹に起こされて、大慌てで用意していたところである。  九時十分の電車に乗らなければ間に合わない。  刻一刻と時間は迫りつつある。 「ハンカチ持った?」 「ばっちり!」 「お茶は?」 「時間が無いからコンビニで買う~!あれ?」  玄関へ走りつつ腕時計を付けながら、汐里は不思議そうな顔をした。  まだ八時三十分ではないか。  それならまだまだ十分余裕はあるため慌てる必要はない。 「私、勘違いしてたみたい。寝ぼけてたかな?」  急に余裕綽々でゆっくりした動きに変えた汐里だったが、樹はその様子におかしな表情を見せた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加