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暫く馬車に揺られていたが、ガタンと大きく揺れて止まった。どうやら目的地に着いた様だ。ヴィレームと共に馬車から下りると、目の前には立派な屋敷があった。 「お帰りなさいませ、ヴィレーム様」 フィオナ達を出迎えたのは長身美形の執事だ。ただ片目には眼帯をつけているのが少し気になる。 「彼は執事のクルトだよ」 「お初にお目に掛かります。私はヴィレーム様の執事を務めおりますクルトと申します。この度は、フィオナ様にお会い出来誠に光栄でございます」 まだ名乗っていないのに名前を呼ばれて、フィオナは目を見張る。戸惑いながら隣にいるヴィレームを見遣ると、彼はにっこりと笑った。 クルトに案内され、客間に通された。行儀が良くないとは分かっているが、部屋の中をきょろきょろと見渡す。屋敷に入ってから何だかそわそわするのだ。落ち着かない。 「どうしたの、フィオナ」 ヴィレームに肩を抱かれ、長椅子に座る様に促される。 「いえ、その……何だか胸が騒つくといいますか……落ち着かなくて」 嘘を吐いても仕方がないので、思っている事を正直に話した。すると彼は眉を上げる。 「自覚はなくても、感じるんだね」 「それは一体どういう……」 彼は微笑むだけでそれ以上は答えてくれない。もやもやとするが、諦める。 「さて、フィオナ。じゃあ僕と少しお話ししようか」 ヴィレームがそう言うと、丁度クルトがお茶の準備をして戻って来た。フィオナは大人しくヴィレームの向かい側に腰掛ける。 ガチャりと音を立ててカップがフィオナの前に置かれるが、礼は述べるが手は付けなかった。非礼だが仕方がない。彼の前で仮面を取るなんて、出来ない……。 「僕は気にしないから、飲んでも大丈夫だよ」 フィオナの様子に気が付いたヴィレームにそう言われ、ハッとする。もしかして、揶揄われているのか……やはり、彼もこの仮面の下が見たくてわざわざ屋敷まで連れて来たのだろうか。そこまで考えて、両手を握りしめた。 また、私は裏切られるの……? 少し身体が震えてくる。 「フィオナ、大丈夫だよ。僕はから」 「え……」 「君を揶揄っている訳でもなければ、興味本位でその仮面の下を覗きたい訳でもない。そのアザの正体が何なのか、僕は知っているんだ。後、これはまだ断言は出来ないけど、多分治す方法もある」 一瞬、彼が何を言っているのか理解出来なかった。暫くフィオナは呆然とヴィレームを見ていた。
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