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フィオナがヴィレームの屋敷に滞在する様になって一ヶ月余り。フィオナは登院すると、いつも通り廊下を歩いていた。 何だか最近周囲からの目が気になる。元々ではあるが、更に増して気になる。理由は分からないが……。そんな事を考えながら歩いていると、向かい側から三人組の女子生徒が歩いて来る。真ん中の派手目な女性を先頭に、残りの二人は後をついて来ている様に見えた。所謂取り巻きと言うやつだ。 フィオナは彼女等の視界に入らない様に、端に寄り道を譲り通り過ぎるのを待っていたが、何故か自分の前で彼女等は足を止めた。 「ご機嫌よう、フィオナ様」 まさか話し掛けられるなんて思わなかった。フィオナは驚いてしまい、声が出ない。 「あら、聞こえませんでした?貴女に挨拶したのよ、フィオナ様」 「あ、あの……」 「あらやだ、挨拶も出来ないの?貴女一応侯爵令嬢でしょう?恥ずかしい人ね」 確かにその通りだ……恥ずかしさに顔が熱くなる。 彼女がそう言うと、後ろの二人がくすくすと大袈裟に笑い出した。無論周囲からも、ひそひそとする声が聞こえてくる。弁解も出来ずに、ただ手を握り締め、俯いた。情けない……。 「ところで、最近随分と調子に乗っていらっしゃるみたいね」 彼女の唐突な物言いに、フィオナはまるで身に覚えがなく困惑した。 「ヴィレーム様と随分親しげみたいですけど、一体どう言うおつもり?」 ヴィレームの名前を聞いたフィオナは、息を呑み、少しだけ顔を上げる。すると所謂取り巻き令嬢の二人は、出番とばかりに胸を張り口を開いた。 「無知で恥知らずな貴女にお教えしてあげます。ヴィレーム様は、ロザリー様の運命のお方なんです」 「そうですわ。ヴィレーム様とロザリー様は結ばれる運命にあり、貴女みたいな人がご一緒にいるなんて、本来ならあってはならない事なんです!なんて、悍ましい」 取り巻き令嬢達の言葉に気を良くしたであろうロザリーは、鼻を鳴らす。 「その通りよ!あの麗しいヴィレーム様と結ばれるべきは、この私。分かっておいでかと思いますけど、ダンスパーティーのパートナーに選ばれるなどと自惚れない事ね。身の程を弁えなさい」 それだけ言い捨てると彼女達は去って行った。暫く何が起きたのか頭がついていかず、立ち尽くしていた。 ダンス、パーティー……そっか、もうそんな時期……。 その夜。 「フィオナ、僕に何か話したい事はない?」 夕食を食べていると、不意にヴィレームが聞いてきた。 「いえ、特には」 「本当に?」 彼の意図が分からず、眉根を寄せる。一瞬昼間の出来事を話そうかとも思ったが、告口をする様で気が引けた。 「はい」 「……そう。でも、何かあったら頼ってくれていいからね」 なんとも言えない瞳で見つめられ、フィオナは首を傾げた。
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