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興味と確かめたい気持ちがあった。もし彼女にヴィレームが感じとっている魔力以上のものがあるならば、きっと契約は成立する筈だと思った。半信半疑ではあったが……。 「き、決まりました!貴方は……フリュイよ」 彼女がそう言った瞬間、部屋には光が溢れ鎖が現れた。生き物の首へと巻き付き中へと消えていく……契約が、成立した。 フリュイと名付けられた獣は、フィオナの使い魔となった。だが肝心の本人はよく分かっておらず、呆然と立ちすくんでいる。 キュゥ〜。 フリュイの声に我に返ったフィオナの頬に、奴はスリスリと甘え出す。 「ふふ、やだ、どうしたの?」 だが仮面が邪魔してフリュイは些か不満そうな顔をする。その光景にヴィレームは内心鼻を鳴らした。 残念だったね。フィオナに直接触れる事が出来るのは、この僕だけだ。何しろ僕と彼女の仲だからね。いくら彼女の使い魔になったからって調子に乗らないでよね……と毒付く。 これは別に断じて、妬きもちとかではない。そんな情けない事を、僕はしない……。自分で自分に言い訳をする。 おっと、今はそうじゃなかった……。 ヴィレームは戯れ合うフリュイを改めて眺める。それにしても、まさか本当に契約が成立するなど驚いた。これは色々と興味深く、調べる必要がある。 「フィオナ。今この時から、その獣は使い魔になったんだよ」 「使い魔って、誰の……」 フィオナは不思議そうに少し首を傾げる。 「勿論、君のね」 そう告げるが、未だ彼女は上手く状況が呑み込めずヴィレームと腕の中のフリュイを何度も見比べている。 「私の、ですか?」 「そうだよ」 「で、でも、ヴィレーム様……私は、魔法使いでも何でもないんですけど……」 困惑する彼女からフリュイを取り上げて、それを床に下ろした。シャーシャー怒っているが、無視してヴィレームはフィオナの肩に腕を回し長椅子に誘導すると一緒に腰を下ろした。 「少し、話をしよう」 ◆◆◆  名前を付けたらとの提案に従い、フィオナは名付けただけだ。それなのにも関わらず、使い魔になったと言われ訳が分からない。 「フィオナが困惑するのは無理ないよ。本来使い魔を所持出来る人間は、選ばれた者だけでね。それは言わずとも分かると思うけど、所謂魔法使いと呼ばれる者達だけだ。しかもその中でも、ある程度の魔力の水準を満たした人間のみで、容易な事ではないんだ」 ヴィレームは戸惑うフィオナの頭を優しく撫でてくれる。 「なら、何故私が……」 「正直、僕にも分からない。ただ君からは出会った時から、微かに魔力は感じ取ってはいる。それはほんの微量程度で、これくらいなら普通の人間でもあり得る事でね……。この量の魔力では使い魔と契約どころか、簡単な魔法すら使えない筈なんだけど……可笑しいね、はは」 神妙な面持ちで話していたヴィレームだったが、急に軽く笑う。その事にフィオナは、脱力をした。
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