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今日も結局、学院からは閉鎖の通達はなかった。きっと明日登院する生徒等は更に減る。だがそれでも、登院する生徒等は必ずいるだろう。人間とは不思議なものだ。危険と分かりながらも、何故行くのだろう。彼女もまたその一人なのだが……。 怖いもの見たさと言った所だろうか……。何故か人間は自分だけは大丈夫だと思い込む者が多い。ただそんな中で、フィオナはそうではない。 何か特別な理由あるのは分かっている。彼女が興味本位や面白半分で行動する様な人間でない事は、よく知っている。 フィオナはヴィレームには理由を話さないが、大体予想はついていた。ただ彼女が、どんな想いかまではヴィレームには、分からない。正直、知る事も怖い。 「ヴィレーム様のお気持ちは良く理解しているつもりです。心配して下さる事も、嬉しく思っています。それでも、私は行かなくてはいけないんです」 彼女の言い回しに、ヴィレームは内心ため息を吐く。 行かなくてはいけない……か。 その言葉からは、使命感の様な強い想いを感じる。 一人目の被害者の翌日、彼女の元婚約者のハンス・エルマーが遺体で見つかった。フィオナはその事に関して何も言わなかったが、そこに理由があるのだろうとヴィレームは考えている。 本当はまだ彼への想いが断ち切る事が出来ずにいるのかも知れない。もしそうならば、フィオナが身の危険を冒してまでも登院する合点がいく。 犯人を探し出し、彼の無念を晴らしたいのだろうか……。 「ヴィレーム様やシャルロット様達に、これ以上ご迷惑も、お手を煩わせる訳にもいきませんので、私に遠慮なさらずにヴィレーム様達は、明日以降はお休み下さい。私は、一人で平気です」 ヴィレームは、呆然とした。やんわりと拒絶された気がした。彼女の気持ちが何も見えない。激しく動揺する。目眩すら感じた。 「いや、そうじゃないんだっ。僕は迷惑なんて思っていない。姉上達だってそうだよ。ただ僕は君の事が……」 「ヴィレーム様は、本当にお優しい方ですね」 「フィオナ?」 「そのお気持ちだけで十分です。ありがとうございます」 「フィオナ……」 「明日から、私は一人で登院します。でも心配なさらないで下さい。私本当に平気ですから」 「……」 ヴィレームの言葉はフィオナには届いていない様に思えた。 どこで間違えたのかが分からない。ただ自分は彼女が心配だっただけだ。彼女が望むなら事件の顛末を分かるまで突き止める。犯人を見つけて制裁を与えてやる。 ただそれまでフィオナには、安全なこの屋敷にいて貰いたかった。ただ……それだけなのだ。だがそれを、彼女は良しとしない。 それ以上、ヴィレームはフィオナに何も言う事が出来なくなってしまった。
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