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「……なので、オリフェオ殿下は犯人ではないんです」 フィオナはこのままでは埒があかないと思い、信じて貰えるかは分からないがシャルロットとオリフェオにヨハンの事を話した。 「……他者の精神を乗っ取る」 シャルロットは考え込んでいるのか、唇に指を当てて、視線を落とす。 「魔力がなくても、魔法を使う方法……。残念ですけど、私は聞いた事がありませんわ」 「そう、ですか……」 「でも、クルトなら何か知っているかも知れませんわね」 意外な人物の名にフィオナは、キョトンとした。彼も魔法を使えるみたいだが、あくまでも彼はヴィレームの執事だ。そんな彼が何故……。 「フィオナちゃん」 ふとシャルロットに手を引かれる。 「と言う事で取り敢えず、一旦屋敷に戻りますわよ」 身を隠しながらフィオナ達は、何とか学院の外へ出た。一応馬車乗り場も覗いては見たが、やはり騎士等が待ち構えていた。故に、馬車は諦めた。 「あの、シャルロット様。歩いて帰るのは、流石に厳しいかと……」 馬車に乗らずにどうやって屋敷まで帰ればいいのか分からない。道も分からないし、そもそも歩ける自信がなかった。 「もう少しだけ、我慢して下さいな」 そう言ってシャルロットは歩き出した。言葉の意味がよく分からないまま、フィオナとオリフェオはその後ろを大人しくついて行く。ふと自分の後ろにいるオリフェオを見遣ると、先程からずっと黙ったままで静かだった。 グワッ! ギュルッ! 暫く歩いた時だった。何やら最後尾が騒がしいと振り返ってみると、アトラスとフリュイが、いがみ合っている。 ここで改めて思う。側から見たら凄い絵面だ。 先頭から煌びやかな令嬢、仮面女、王子、獣二匹。今の所誰も通らないのでいいが……これは、かなり目立つのでは……。 それにしても、本当に馬車一台通らない。騎士等が追って来る気配もない。多分まだフィオナ達が、学院内にいると思い探しているに違いない。だが、何時気が付き追って来るとも限らない故、油断は出来ない。 「さぁてと、そろそろかしらぁ?」 シャルロットは立ち止まると、辺りをキョロキョロとする。急に止まった事に、フィオナもオリフェオも不審な目を向けた。するとその時、奇妙な音がするのに気が付いた。段々と近付いて来る。 ガタガタッガタンガタンッッ‼︎ 「⁉︎」 一際音が大きく感じた瞬間、突如馬車が現れた。沿道沿いではなく、フィオナ達を遮る様に横の林から飛び出して来たのだ。それはもう声も出ないくらい驚いた。目を見開き固まる。 フィオナは、呆然としながら林へ目を向けると、草木は乱暴に薙ぎ倒されている。それだけで、この馬車がかなり強引に駆けて来た事が分かった。 「愚弟にしては、早かった方ですわねぇ」 シャルロットは不敵に微笑んだ。その次の瞬間、バンっと音を立てて扉が開いたと思ったら、気付けばフィオナは彼の腕の中にいた。 「ヴィレーム、様⁉︎」 目にも止まらぬ速さで下りて来て、そのままフィオナを抱き締めたのだ。 「フィオナっ、ごめん、ごめんね……ごめん」 何度も謝る彼にフィオナは、戸惑った。謝られる覚えはない。寧ろ、フィオナの方が謝罪するべきだ。巻き込みたくないからと、ヴィレームに大事な事を告げず、ワザと素っ気なくしてしまった。彼の意思を、無視してしまった……。 「ヴィレーム様……?」 「君を一人にしてしまった……迎えに来るのが、遅くなってしまった……」 彼の言葉に、フィオナは瞠目し直ぐに目を細める。力強く抱き締めてくる彼の背に、遠慮がちに腕を回してみた。 「ヴィレーム様……私こそ、申し訳ありませんでした。迎えに来て下って、本当に嬉しいです」
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