目をそらしても現実は変わらない

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「まったくもう。次の通院はいつ? うちも休み取って通院に付き添うから。そんで兄貴がしなきゃならないことを先生に聞くから」 「え、それはちょっと」 「しなきゃ兄貴いつまでもうだうだうじうじしてそうなんだもん。ちゃんと先生の言うとおりにしたら少しは働きやすくなるんじゃないの?」  ナナは薬のレジ袋に一緒に入れていた診察券を見つけて、裏に書かれていた予約日時を手帳にメモした。これはどうあがいても次回の診察についてくる流れだ。  障碍者の兄なんて嫌! と言われなかったのは幸いだけれど、妹に世話を焼かれっぱなしで自分が情けなくなった。 「診断をされる前とされた後で兄貴が別の存在になったわけじゃないでしょ」 「それはそうだけど」 「……とにかく。うちはこれで帰るけど、兄貴は次の診察までに冷静に考えた方がいいよ。障害者手帳の申請をするかどうか、障碍者枠雇用を利用するかどうか。どっちもしないのって現状維持でしかないのわかってる? 三ヶ月以上バイトできたことがない現実、ちゃんと見えてる? しっかりしなよね」  ナナは虎門が逃げたい現実を全部突きつけてくる。  玄関扉が閉まり、足音が遠のく。  これ以上試用期間で切られる日々を繰り返せば、五年後十年後、就職がさらに厳しくなる。必ずナナの負担になってしまう。それは避けたい。  わかってはいるけれど、障碍者と呼ばれたくはない。  簡単に割り切ることができず、うまく寝付けないまま次の日の朝を迎えた。
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