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どこに行っても通用しない、一年以上の職歴が無い時点で雇うのをやめときゃよかった。
怒声がいくつも刺さって痛みが消えない。
(健常者なら、今日の仕事もうまく立ち回れるのか。やっぱりおれ、駄目なんだな)
障害を隠したまま働くことはできないか、と初田にすがったが、それは無理だと今日一日で身にしみた。
何も説明しなければ、物覚えが悪い失敗ばかりの無能だ。
次の職場でも仕事を覚えられず怒鳴られるだけなら、初田の言うように障碍者枠に賭けた方がいいのかもしれない。
ナナも、障碍者と呼ばれることになっても気にしないと言ってくれた。
(でも、こんなおれに合う仕事なんて、あるのか……? 障碍者枠でも無能だって言われたら、生きていける気がしない。おれだって、おれなりにがんばってるのに。結果がついてこなきゃ、どうしたって言い訳ばかりの無能なんだ)
悔しくて、どうしようもなくて、アパートに帰ってすぐ、部屋の電気もつけずにベッドに突っ伏す。どうせ隣の部屋は空き部屋だ。
虎門は枕に顔を埋めて泣いた。
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