最後の謎かけ

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「以上が極秘調査により判明致しました、シドロ商事による、わが社の乗っ取り計画の全容と進行状況です、専務」 「うーん……。まさか、ここまで事態が深刻化しているとは」  俺の報告を専務は苦虫をかみつぶしたような顔をして聞いていた。社長室を支配していた鬱々とした空気がより一層重さを増した。 「はい。もはや一刻の猶予もございません。すばやい対応が必要かと思われます」 「そうだな。四の五の言っておられんようだな」  そう言うと専務は立ち上がり、社長のデスクへと歩み寄った。いよいよ専務は決意したようだ。その表情は厳しさの中にもどこか晴れやかさを漂わせていた。  シドロ商事の乗っ取り計画を察知してからのこの半年、専務は常にこの乗っ取り問題に頭を悩ませていた。それがいよいよ解消されるというのだから、専務の表情に晴れやかさが滲み出たことを誰も責められはしないだろう。  普段、専務は社長の太鼓持ちのように見えて、『コイツがいてもいなくても一緒じゃね?』『いやむしろ、いた方が邪魔じゃねえ?』と前々から陰口を叩かれていたが、この半年で、専務は会社を愛し、守ろうとする人なんだと俺は見直していた。そんな専務の奮闘を少しでも手助けしようと、俺もこの半年、死力を尽くしてサポートしていた。  その苦労がいよいよ報われる。あとは社長の決断だけだ。  社長は、椅子に腰かけ、デスクに背を向け、窓の外を見ていた。専務は社長に声をかけた。 「社長、いかが致しましょう」 「うーん……」  社長は低く唸った。無理もない、非常に厳しい局面だ。しかし、わが社が生き延びるにはこの方法だけしかない、そう思えるほど俺と専務は準備してきた。ぜひ社長には早く決断してほしい。俺も社長に声をかけずにはいられなかった。
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