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社長室に沈黙が訪れた。社長は何を言っているのか? まったく意味が分からなかった。何だ、なにが起こっているんだ。
「……、きみ!」
いきなり社長に強い口調で呼ばれビクッとなった。
「え? あ、はい」
「『そのこころは』、は?」
社長が変な催促をしてきた。
「はい?」
滅多なことでは上司に二度同じ命令を言わせないのが信条である俺も、さすがに社長が何を欲しているのかわからず聞き返してしまった。
「『そのこころは』、は?」
「え、えーと……」
「『そのこころは』って言いなさい!!」
わけのわからないところで社長がヒートアップし始めた。俺は慌てて指示に従った。
「そ、そのこころは!」
俺の言葉を聞き、社長はニヤリと満足げに笑い、そして言った。
「かい、しめます」
社長室がまたもや静寂に包まれた。さっきまでは重苦しい沈黙が社長室を支配していたが、今は空虚な静寂に包まれていた。なんだ? 今のやり取りは何だったんだ。混乱しているのは専務も同じようだった。意を決したように専務が社長に尋ねた。
「……えーと、社長、どういう……?」
「いや、だから、『かい、しめます』だよ」
「かい? しめます?」
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