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社長の言葉は依然俺と専務を混乱の世界に閉じ込め続けた。いよいよ何をどう聞けばいいのかもわからなくなって、俺と専務は冷や汗をかきながらフリーズした。
すると、その様子を見て得心がいったのか、社長は朗らかに声を上げた。
「あー、そうかそうか。難しかったか? レベルが高すぎたか?」
「レベルが高い?」
社長の言葉を真正面から受け止め、何とか理解しようと頑張る専務であった。俺はこのままではらちが明かないと、ストレートに聞いてみた。
「社長、いったい全体なんなんですか?」
社長は俺たちの理解の遅さと、俺の若造のくせに上司に対してぶっきらぼうな物言いに機嫌を害したようだった。
「なにって、謎かけじゃないか」
「謎かけ?」
俺と専務は顔を見合わせた。
「知らないの? 流行っているんだよ」
え、いや、流行っているかどうかは知らないけれど、何故、今、謎かけをしたのか。今はわが社が生きるか死ぬかの瀬戸際なんだ。社長はそれをわかっているのか? わかっていて、俺たちを和ませるためにジョークを言ったとか、いやそれにしても冗談が度を超えすぎている。俺は怒りを覚えた。そして一言言ってやろうと思った。その時、
「いやー! 社長! お見事!」
専務が拍手をしながら、社長を褒め称えはじめた。
「専務?」
「株式会社の乗っ取りとかけて、番長の海女さんととく。そのこころは『かい、しめます』。いやー、お見事!」
専務がいつもの太鼓持ちモードになった。
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