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「専務、いったいなにを言っているんですか?」
いきなりの専務の変身ぶりに戸惑う俺をキッと睨み、専務は怒鳴った。
「きみ! 社長が面白い事言ったんだよ! 笑わないとダメでしょ!」
え~!? 俺は脱力した。今、社長を持ち上げる意味が分からなかった。
いや、社長に早く決断を下してもらわないと会社がエライことになるんですけど。社長の茶目っ気に付き合ってる時間はないというかなんというか。と俺がブツブツ言っていると、
「なに? たかがイチ社員が社長のご意向に逆らおうって言うの?」
と、専務が金切り声を上げ、ヒステリックになってきた。
「な、なにを言っているんですか! 今は、そういう状況じゃないって、さっきからずっと話していたでしょう!?」
俺も少しヒートアップしはじめていた。
「『なにを言っているんだ』は、きみじゃないか! 社長あっての会社でしょ? 株の買占めより社長のご機嫌でしょ?」
専務のワカランチンに真っ向からぶつかってガチンコファイトクラブしてやろうか、と思うぐらい頭にきていたが、いや、今はそれどころじゃないんだ、と、俺は今一度冷静に話を進めようと試みた。
「と、とにかく、今はいかにシドロ商事の株取得を抑えるかが最重要課題かと」
しかし、そんな俺の苦労空しく、社長が挙手し、またさっきの声を上げた。
「あー」
「あ、はい、社長!」
「整いましたー!」
「よ! 社長!」
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