ゆりかご

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目を覚ますとふわふわと甘ったるい匂いに包まれていた 目を開けると知らない天井 包まれるように揺れている乗り物 規則正しく回る煌びやかなオブジェ ここはどこだろうと思う間も無く 柔らかな笑顔で覗く女性 「あら・・目が醒めたのね。そろそろミルクの時間でちゅよ」 耳障りな赤ちゃん言葉を投げかけられる 口に無理やり突起物が詰め込まれ中から液体が出てくる 飲む・・しかなかった。 ここは・・どこだろうか俺は、・・私は?どうしていたのだろうか・・・ 少なくとも、この女性が何を言っているのかは理解できる しかし、今までの事が何も思い出せない。 目の前の女性が愛しそうな眼差しでこちらを見ている 「あの・・ここはどこですか?」 女性は愛しそうな眼差しを崩さず答える 「ゆりかごの中よ、もう何も心配しなくて良いの。ママがついているからね」 「ママ?あの・・私はどうしてここにいるんですか?」 「赤ちゃんだから。何も出来ないから。」 ・・・?何も出来ないはずが無い。現にこうして会話出来ている! 「あなたは誰ですか?今何年何月ですか?」 「私はママよ。あなたは生まれたばかりの赤ちゃんなの」 「答えになっていないです」 「私はママよ。あなたは赤ちゃんなんだから何もしなくていいの」 「答えて下さい!あなたは誰ですか?ここはどこですか?」 「私はママよ。あなたは赤ちゃん」 「嫌!!私のママはあんたじゃない!!ここから出して!家に帰して!!」 「私はママよ。あなたは赤ちゃん。さぁ赤ちゃんは寝ましょうね」 「やめて!やめて!!」 先程のミルクと呼ばれた液体が口の中に無理やり入る 激しく抵抗する!はずが・・・手足に力が入らない・・目も・・開かなくなってきた・・・・何で・・・なん・・・ 「あなたは赤ちゃん。さぁ赤ちゃんは寝ましょうね」 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 『厄介だな・・・記憶がまだ残っているのか』 『記憶に関しては削除コードが正常作動するまで時間がかかるらしい。うーん・・やはりそう簡単にはいかないか。せっかく肉体細胞を生まれた状態まで戻したのに』 『しょうがないさ。ニンゲンはあの個体を残して全滅したのだから。あの個体には生命活動を維持してもらわないと研究が出来ないからな。あ、そうだそうだ、「ママ」を投影するホログラムのスイッチを切っておいてくれ。お気に召さないようだったぞ。次はもっとマシな「ママ」のホログラムを作れよ』 b4e19f1b-9674-401d-8bb1-aa70e8f216a2
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