Ⅱ ~戴天~

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 翌日。ついに力の詳細を知る儀式が行われる。  この地域では宿能之儀と呼ばれている。本来は生まれたころから能力が宿っているが実際に使えるようになるのはこの儀式の後のため、能力が宿る儀式と言われている。  そしてこれは子供一人ひとりする儀式ではなく一度に多数の子供を相手にする儀式だ。  儀式が終われば空から紙が降り下りてきて、能力が書かれている……ということらしい。  摩訶不思議である。  しかも空から降ってくるのに絶対に取違いが起きないのもまた不思議である。  私は手の中にすっと入ってきた紙を握る。  そこには、しっかりと私の名が刻まれていた。  実際能力を整理していた時にざっとステータスは見えていたが、実状はどうなっているか、それだけは見ておかなければならない。  不意に裏返したそれを私は表向けた。  【ステータス】  名*ニゲラ・ヴァイスピール  二つ名:【神の落とし娘】  魔属性:火・水・地・木・光・闇・聖・魔・霞・雷・氷・熱・無・瘴・毒・竜・精霊・古代・再生・破壊  能力* 〈自己並列思考(メーティス)〉 〈想像模倣(オケアノス)〉 〈概竄改戻(アレース)〉 〈四星召喚(バーン)〉 〈彩色神雷(ゼウス)〉 〈精霊法則(アグス・テミス)〉  固有能力*『操血』  ‹呪縛›;‹鮮血衝動›  私たちの集まる場所が阿鼻叫喚の地獄絵図となった。  その中で、私だけは沈黙を貫いていた。ここで騒ごうがどうだろうと、意味はない。  さっさと帰って家族内だけの秘密にしよ――。 「開示を受けた者は順に並んで公表しなさい」  ……は?  ちょっと待って、正気?  今からでも遅くはない。全速力で逃げ出そうか。それだと外にいる傭兵に止められる。  実力行使したら抜けられるがそれである程度の実力は見破られ結局バッドエンド。  この天啓の紙は能力による改変を受けないから私の能力で改竄して周りを偽ることもできやしない。  ここでの最適解は、前提条件としてこの場にいる人間に極力私の能力を知られないことだ。  故に、私が取るべき結論は……。 「どうされましたか、ここで立ち止まって」 「いえ、あまり大声で何か言われてここにいる人にあまり笑われたりしたくないので、一番最後に並ぼうかなと」  この列の最後に並ぶことだ。  この場で誰にもバレずここを切り抜けるのは無理がある。だから気づかれるのも最低限の人間のみにするしかない。  だから、最後尾に並ぶのだ。 「最後は誰だ……って貴族の下のやつかよ。さっさと渡せよ。どうせ下民は下民らしく弱っちい能力しか持ってないんだろう?」  その神官か何かわからないが、私に声をかけたその男の何気ない一言に私は怒りの限界は刹那にして振り切れた。 「……そんな小言しか言えないなら平民だろ」 「あぁっ、俺を罵倒したか?今なら訂正が聞くぞ?」 「うるさいな、耳障りだから口を開けないでくれないかな」  私が強くあしらうと男は顔を赤くさせていた。  怒りが顔面の隅々にいきわたっていた。 「お前ら、こいつを捉えろ!悪逆人として磔刑に処してやる!」 「そんな戯言言ってられる暇があるならさっさと私のステータス書き記してよ……私だって常時暇だってわけじゃあないんだし」  そう私が言うと嫌々という様子で私の手に渡った紙を手に取る。  そして、男は目を丸くし顔をみるみる青くしていった。 「なんだよ、これ……」 「……これを世間に公表しないこと。これだけ守ってくだされば私があなた方に手出ししないと約束します」  私がそう言うとそのための契約書を作ると言って身を隠した。  気配を辿って監視すると、謎の水晶のある部屋。  そしてそれが光ったとき、そこには謎の人物が映し出されていた。  私はソレを見た瞬間に男の頭を蹴り飛ばし、水晶を木っ端みじんに蹴り砕いた。  決して行儀のよい終わらせ方ではないが、今回ばかりは仕方がない。  私は一応ステータスを見せたわけだし、まぁ問題になることはないだろう。  そう心の中で願いながら、私は帰路に着く。  ……家族の内誰かは卒倒しそうだな……。
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