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「気にしない?」
「・・・うん」
頷くと、彼は、ほっとしたような笑顔になった。
また、私の胸が鳴る。
「・・・けど、まあ、できるだけ色々頑張ります。心春さんを不安にさせたくないし・・・、オレが頼りないせいで、心春さんを誰かに取られたくないし・・・」
言いながら、ゆっくりと、彼は私に手を伸ばす。
私の頬が、彼の大きな右手に包まれた。
ギターを教わった時にも感じたけれど、男性にしては、細くて長い指だと思った。
触れられると、それが実感として伝わって。
首元に沿った彼の手が、私の身体を震わせた。
「・・・かわいいな。やっぱ」
賀上くんは、私をじっと見つめると、真面目な顔でそう言った。
その視線が、恥ずかしくって耐えられなくて、逃げたい気持ちになってくる。
けれど、大きな右手で頬を包まれている状態だから、視線を逸らすだけで精いっぱいだ。
「ね・・・寝起きの顔だよ。化粧もずっと、昨日のままだし・・・。マスカラとか・・・、アイラインも落ちてる気がするし」
「・・・・・・、ああ・・・、確かに」
「・・・っ、じゃ、じゃあ、見ないで・・・っ」
恥ずかしすぎて、私は、できる限りで顔を背けた。
けれど、すぐに頬を引き寄せられて、彼は私にキスをした。
一瞬で、全ての思考が飛んでいく。
1秒か、2秒くらいのキスだけど、私はもう、何も考えられなくなってしまった。
「・・・かわいいけど。寝起きでも、化粧取れてても」
「う、嘘・・・」
「・・・嘘ならキスとかしないんで」
「・・・・・・」
それ以上、抗う言葉は見つからなかった。
私はとてもドキドキとして、落ち着かなくて、少しだけうつむいくと、右の耳に、髪をかけた。
「・・・心春さん」
「うん・・・」
「一応確認しますけど・・・、これから、オレの彼女ってことでいいですか」
「・・・っ、うん」
頷くと、彼は満足そうな顔をして、もう一度、私にキスをした。
今度は、さっきよりも深くて長い・・・、甘く蕩けていくような。
クラクラと、倒れそうな感覚になり、私は、彼の腕をぎゅっと掴んだ。
それがまるで合図のように、彼は私を抱き寄せて、さらに深く口づけた。
ーーー頭の中は、真っ白で。
ただ、キスを何度も重ね合う。
お互いに、「はあっ」と息が上がってくると、彼は、私から少し距離を取る。
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