花天月地

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ファミレスデートからちょうど一週間が経った金曜日。 変わらずに、賀上くんは毎日連絡を入れてくれ、私も、今日あったことなどを報告し、会えないけれど、大切にされている実感はあり、不安になることはなかった。 彼は時々、練習時の写真も送ってくれるから、それを見るのも楽しみで、嬉しいなって思うのだけど・・・。 やっぱり、画面越しの電話や写真だけではなくて、直接会えたらいいなと思う。 けれどそれを伝えてしまったら、絶対彼は無理をして、私のために時間を作ってくれるだろう。 だから・・・、この気持ちは心にしまっておかないと。 (久しぶりのライブだし・・・、賀上くんの邪魔はしたくないもんね・・・) 今週は、会社でも一度も会えなかったから、余計に寂しさを感じてしまうのかもしれない。 彼のことは応援したいし、ライブが楽しみなことも本当だけど・・・。 (・・・でも、なんだか今の私は、『会えない』『寂しい』ばかりに意識を向けているかもしれないな・・・) 賀上くんは、今後もずっとバンド活動を続けていくと思うから、こういう時期は、これから何度もあるはずだ。 そのたびに、「会えない」「寂しい」ばかりを思っているのは、彼だって重く感じるだろうし・・・、なにより、私自身がしんどい気がする。 私にも、彼のことばかり考えないで済むような、夢中になれる趣味でもあればいいけれど・・・。 「・・・・・・」 (・・・とりあえず、明日明後日の土日はどこかへ出かけよう) 今までだって、私は週末ほとんど一人で過ごしていたんだ。 これといった趣味はなにもないけれど、最近は、おしゃれもメイクも楽しいし・・・、そうだ、今度のライブに着ていく服でも買おうかな。 久しぶりに、映画を観に行くのもいいかもしれない・・・。 そんなことを考えていたら、私は次第にワクワクしてきた。 ライブ前、彼と会えない期間はもちろんとても寂しいけれど。 その時間、一人でも楽しく過ごせるように、色々な場所に行ってみようと考えた。
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