花天月地

9/84
前へ
/227ページ
次へ
電車に乗って、着いた駅から徒歩10分。 お目当てのショッピングモールへと辿り着き、私は、ひとまずフロアガイドを手に取った。 店内は、オープンして間もないということもあり、日曜日の今日は、とても多くの人でにぎわっている。 (予想はしてたけど、思った以上に混んでるな・・・) ゆっくり試着ができるだろうか・・・と思いつつ、せっかくなので洋服屋さんを見て回る。 色々と目移りしながらも、かわいいワンピースを売っているお店があったので、店員さんに声をかけ、早速試着をさせてもらった。 すると、サイズもぴったりだったので、これにしようとレジへと進む。 (ボタンが多くて着るのがちょっと大変だったけど・・・、かわいいし、買っちゃおう) 綿素材、ヒラヒラとした半袖の、黒いロング丈のワンピース。 Vネックの前開き。襟元から裾までをボタンで留めるようになっている。 腰には太めのリボンベルトがついていて、スタイルも良く見えそうだった。 あまり仕事向きではないデザインなので、今度のライブと・・・デート用にしようと思う。 (・・・賀上くんが好きな感じの服かはわからないけど・・・、かわいいって思ってもらえたら嬉しいな) そんな願いを抱きつつ、店員さんからワンピースの入ったショッピングバックを受け取って、店を出た。 次はどこに行こうかな・・・と考えていると、前方に、見覚えのある女の子2人の姿が目に入る。 勝ち気な目をした、金髪のきれいな女の子。 黒いマスクをした、全身黒ずくめの女の子。 あれは・・・、亜莉沙ちゃんと、亜莉沙ちゃんのバンドのベースの女の子だ。 横には、大学生くらいの男の子たちも2人いて、親しげに話をしている様子から、友達同士で遊びに来たのか・・・ダブルデートかもしれない。 ふっと、亜莉沙ちゃんと目が合って、私は軽く会釈する。 亜莉沙ちゃんは、そんな私を怪訝そうな顔で見つめた後に、すぐにハッとしたような表情になり、ツカツカとこちらに向かって歩いてきた。 そして、目の前でピタリと立ち止まり、私をキッときつく睨んだ。
/227ページ

最初のコメントを投稿しよう!

225人が本棚に入れています
本棚に追加