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私ーーー向居心春(むかいこはる)の初恋は、中学に上がった頃のことだった。
ーーーいつから好きになったっけ。
夏休み?文化祭?
明確な時期というのはわからない。
ただ、気づいたら好きになっていた。
担任だった、国語教師の元村(もとむら)先生。
最初はただ、憧れていただけだと思う。
けれど気持ちは確実に、恋へと変化していった。
私が通っていた学校は、中高一貫教育をしている女子校だった。
当然ながら、学校内に同年代の男子はいない。
6年間、ずっと同年代の男子はいない。
友達の中に彼氏がいる子もいたけれど、みんなの恋の相手といえば、ほとんどが、有名人や2次元や、通学の時に見かける男子。
あとはやっぱり、先生を好きになる生徒たち。
私もそんな、一人だった。
元村先生の第一印象は、「ごくごく普通の若い男の先生」。
かっこ悪くはないけれど、イケメンというにはあまりに普通。
だけど・・・いつからだろう、そんな先生を「かっこいい」って認識するようになったのは。
好きになってしまってからは、「かっこいい」としか感じなかった。
好みは色々あるけれど、元村先生はすごく優しかったから、恋愛感情があるかないかは別にして、生徒から、すごく人気の高い先生だった。
バレンタインは、友達と一緒に先生にチョコを渡しに行った。
文化祭や体育祭では、先生と写真を撮るのに必死だった。
修学旅行は、できるだけ先生と一緒の場所を回りたかったーーー。
中高時代を思い起こすと、全ての場面に、先生の顔が自然と浮かぶ。
教室も、校庭も。
殺風景な渡り廊下も。
先生がいるってだけで、特別な世界のようだった。
あの頃聞いた流行りの歌は、全て、当時の気持ちをよみがえらせる。
あの曲も。あの歌も。
ーーーーー大好きだった。本当に。
そしてそれから大人になって、一度、恋が実って壊れても。
私は今も、あの頃の想いに囚われたまま。
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