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「ん?」
見せられた画面には、「運命の相手と出会うならココ!!」というキャッチフレーズと共に、笑顔の男女が映っている。
いわゆるマッチングアプリのサイトのようだ。
これは・・・と、私は即座に眉根を寄せた。
「あっ!その顔っ、なんか怪しいって思ったでしょ!」
「うん」
「怪しくないから!ここね、友達のお姉さんが登録してて、ここで出会った人と今度結婚することになったんだって。無料じゃなくて、男女とも会費払うから真面目に恋愛したい人が多いみたいよ。年齢層も割と高めだし・・・、落ち着いた男の人が多そうなのよね。だから、おねーちゃんもどうかなって」
「・・・・・・、ごめん。私はいいよ」
奈緒の心遣いはありがたい。
色々と心配してくれているのもわかってる。
だけど私は、積極的にこういうものに参加したいと思わなかった。
「もー!!ちょっとは冒険してみなよ!合コン苦手、紹介は気を遣うから無理、偶然の出会いはまるでナシ・・・って、アプリもだめなら、もう、一生恋愛できないじゃん!!」
だんっ!と音を立てて机に手をついた後、奈緒は「マズイ」といった表情で、寝ている琉花を振り返る。
けれど琉花はこちらを気にすることはなく、相変わらずすやすや眠っている。
よかった・・・と、奈緒は胸をなでおろし、ワントーン声を落として話を再開。
「あれからもう6年でしょ?おねーちゃん、あと2年で30歳になるわけだしさ。新しい恋愛にもっと積極的になるべきだって」
「・・・うん、頭ではわかっているんだけど・・・」
どうしても、先生の顔が頭に浮かぶ。
忘れたいのに、忘れさせてくれないみたいに。
「頭だけじゃだめだって!もっとちゃんと、積極的に出会いを求めにいかないと」
「・・・うーん・・・、でも、マッチングアプリっていうのはな・・・。実際、そこまで彼氏が欲しいわけではないし」
私が言うと、奈緒は「ん、もー!!」とじれったいように両腕の握りこぶしを上下に振った。
「おねーちゃんはね、いつまでも過去を大事に大事に引きずってるから、彼氏欲しくないとか言うんだよ!もうね、難しいこと考えないで、さっさと新しい彼氏を見つけるべきです!」
座ったままで、奈緒は鼻息荒く「ふんっ」と両手を腰に当てた。
私は、「過去を大事に大事に引きずっている」という言葉が胸に刺さって、反論することができない。
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