225人が本棚に入れています
本棚に追加
出会い
───お風呂上がりに飲むビールは格別。
子どもの頃、ドラマやCMで大人が美味しそうにビールを飲む姿を見ては、「そんなに美味しいのかなあ」って疑問に思っていたけれど。
美味しいです、うん、子どもの自分に伝えたい。
髪をタオルで乾かしながら、残りのビールをゴクゴクと喉に流し込む。
ぷはぁ、と息をついた時、テーブルの上のスマホが震えた。
見ると、妹の奈緒(なお)からメッセージ。写真も添付されている。
生まれて半年になる奈緒の娘・・・私の姪っ子である琉花(るか)の写真だ。
『この前遊びに行った時の写真だよ~』
そういえば、夫の央登(ひさと)さんが有給とれたらテーマパークに遊びに行くとか言っていたっけ。
無事に有給がとれ、3人で遊びに行ったのだろう。
琉花の手には、かわいらしいクマのぬいぐるみがしっかりと握られている。
(わあー・・・、この前会った時よりも、ちょっと大きくなったかな?かわいさ前より増してるし)
琉花を見て、自然と目じりが下がってしまう。
妹の奈緒はかわいいし、旦那さんである央登さんもとても素敵な人だ。
琉花がかわいく育つのは、ある意味当然のことである。
(・・・って、もしかしたら、伯母ばか入ってるかもしれないけどね・・・)
琉花の写真を眺めていると、続いて、3人の家族写真も送られてきた。
テーマパークの看板を背に、奈緒と琉花、央登さんが写ってる。
笑顔の央登さんが琉花を大切そうに抱っこして、それに寄り添う奈緒の姿。
幸せを絵に描いたような光景だ。
(・・・央登さん、相変わらず優しそう。いいパパだよね・・・、奈緒も幸せそうでなによりだ・・・)
ずっとかわいがってきた、とても大事な妹だ。
その妹が、今、こんなにも幸せそうに暮らしてる。
微笑ましさと安心と、とても嬉しく感じる気持ち。
そして同時にどうしても、うらやましいな、と、思う気持ちも湧きあがる。
(・・・結婚、か・・・)
だけど奈緒みたいな結婚なんて、家族だなんて、私には夢のまた夢かもしれない。
いつかは・・・って、もちろん夢見ているけれど。
───あの人を、私は忘れられるかな。
新しい恋をしてみたい。
その想いは心の奥にあるけれど、私はまだ、初恋を握りしめたままで離せない。
最初のコメントを投稿しよう!