出会い

1/35
前へ
/227ページ
次へ

出会い

───お風呂上がりに飲むビールは格別。 子どもの頃、ドラマやCMで大人が美味しそうにビールを飲む姿を見ては、「そんなに美味しいのかなあ」って疑問に思っていたけれど。 美味しいです、うん、子どもの自分に伝えたい。 髪をタオルで乾かしながら、残りのビールをゴクゴクと喉に流し込む。 ぷはぁ、と息をついた時、テーブルの上のスマホが震えた。 見ると、妹の奈緒(なお)からメッセージ。写真も添付されている。 生まれて半年になる奈緒の娘・・・私の姪っ子である琉花(るか)の写真だ。 『この前遊びに行った時の写真だよ~』 そういえば、夫の央登(ひさと)さんが有給とれたらテーマパークに遊びに行くとか言っていたっけ。 無事に有給がとれ、3人で遊びに行ったのだろう。 琉花の手には、かわいらしいクマのぬいぐるみがしっかりと握られている。 (わあー・・・、この前会った時よりも、ちょっと大きくなったかな?かわいさ前より増してるし) 琉花を見て、自然と目じりが下がってしまう。 妹の奈緒はかわいいし、旦那さんである央登さんもとても素敵な人だ。 琉花がかわいく育つのは、ある意味当然のことである。 (・・・って、もしかしたら、伯母ばか入ってるかもしれないけどね・・・) 琉花の写真を眺めていると、続いて、3人の家族写真も送られてきた。 テーマパークの看板を背に、奈緒と琉花、央登さんが写ってる。 笑顔の央登さんが琉花を大切そうに抱っこして、それに寄り添う奈緒の姿。 幸せを絵に描いたような光景だ。 (・・・央登さん、相変わらず優しそう。いいパパだよね・・・、奈緒も幸せそうでなによりだ・・・) ずっとかわいがってきた、とても大事な妹だ。 その妹が、今、こんなにも幸せそうに暮らしてる。 微笑ましさと安心と、とても嬉しく感じる気持ち。 そして同時にどうしても、うらやましいな、と、思う気持ちも湧きあがる。 (・・・結婚、か・・・) だけど奈緒みたいな結婚なんて、家族だなんて、私には夢のまた夢かもしれない。 いつかは・・・って、もちろん夢見ているけれど。 ───あの人を、私は忘れられるかな。 新しい恋をしてみたい。 その想いは心の奥にあるけれど、私はまだ、初恋を握りしめたままで離せない。
/227ページ

最初のコメントを投稿しよう!

225人が本棚に入れています
本棚に追加