*最後の楽園*

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 ここに戦争があるはずもなかった。そもそも人間がいないのである。 「太平洋ごみベルトだ」  西の果てを見据えて、フンペが言った。 「昔、聞いたことがある。日本や中国から流れてきたごみが、潮の流れのよどみに溜り、漂っていると。それがいつの間にか寄り集まって、こんなに大きな浮島になっていたんだ」 「痛ってえ!」  ベントスの悲鳴が上がる。二人は彼の元へ駈けつけた。 「ベントス、どうしたんだよ」  うずくまる背中に訊ねる。彼は顔をしかめて答えた。 「何か、尖ったものを踏んづけたんだ」  ベントスは足の裏を怪我していた。傷は深いらしく、血がどくどくと流れ出ている。 「私が手当しよう」  フンペが救急用品を持ち出す。心配するネクトンをよそに、ベントスは怒りに任せてわめいた。 「誰だ、こんな物を海に捨てたのは!」  傷口を見て、ベントスは青ざめた。  彼の足に突き刺さっていたのは、彼の釣針だったのだ。
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