1人が本棚に入れています
本棚に追加
ここに戦争があるはずもなかった。そもそも人間がいないのである。
「太平洋ごみベルトだ」
西の果てを見据えて、フンペが言った。
「昔、聞いたことがある。日本や中国から流れてきたごみが、潮の流れのよどみに溜り、漂っていると。それがいつの間にか寄り集まって、こんなに大きな浮島になっていたんだ」
「痛ってえ!」
ベントスの悲鳴が上がる。二人は彼の元へ駈けつけた。
「ベントス、どうしたんだよ」
うずくまる背中に訊ねる。彼は顔をしかめて答えた。
「何か、尖ったものを踏んづけたんだ」
ベントスは足の裏を怪我していた。傷は深いらしく、血がどくどくと流れ出ている。
「私が手当しよう」
フンペが救急用品を持ち出す。心配するネクトンをよそに、ベントスは怒りに任せてわめいた。
「誰だ、こんな物を海に捨てたのは!」
傷口を見て、ベントスは青ざめた。
彼の足に突き刺さっていたのは、彼の釣針だったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!