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ネクトンもベントスも、みんな黙り込んでしまった。長老は続けた。
「住む家を失う前に、引越先を決めておかねばなるまい。そらごとだったとしても、探しにゆく値打はあると思うよ」
「行こう! 最後の楽園へ行こう!」
話は決まった。信じていてもいなくても、島があるなら移り住みたいと、ここにいる誰もが思っていたのだ。
「でも、誰が探しに行くんですか。潮の流れに乗れば、数日で着くはずですが」
赤ん坊がぐずり出したのは、その時だ。ネクトンはハッとした。席の端っこで、両親が我が子を一所懸命あやしている。もし引越先が決まらなければ、あの子の将来はどうなるだろう。
彼は勇ましく立ち上がった。
「僕が行きます!」
「俺も行く」
ベントスが手を挙げたので、ネクトンはぎょっとした。二人を見て、島の大人たちが感心する。
「二人とも壮健とは言え、子供だけで行かせるのは危ない。私が随いて行きましょう」
厚い胸板を叩き、フンペが名乗り出た。彼は腕利きの漁師で、海のことなら島の誰よりも詳しい。長老は深く頷いた。
「フンペがいれば安心だね。二人のことを頼むよ」
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