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夕焼色の海を一艘の船が行く。魚の串をもてあそび、ベントスはあくびをした。
「ネクトン。今日も島は見つからねえのか」
船室の屋根に坐り、水平線に目を凝らしていた彼は言い返した。
「文句を言うくらいなら、どうして名乗り出たんだよ」
ベントスは鼻で笑った。
「俺が最後の楽園を見つけて、あのババアを見返してやるんだよ」
また、太陽が昇った。日が肌をじりじりと焼く。舵を取っていたフンペは、暦を見て呟いた。
「やはり、そらごとだったか」
二人に呼びかける。
「飲水もそろそろ半分を切る。もう引き返すとしよう」
ベントスがさっさと船室に戻る。ネクトンも屋根から降りようとして、はたと立ち止まった。
北の水平線に、平らな白っぽい影が見える。
「フンペさん、島です! 島が見えました!」
ネクトンは大喜びで指差した。
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