*最後の楽園*

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 船が岸に着くなり、ベントスは裸足で飛び降りて宣言した。 「一番乗りは俺だ、俺の手柄だ!」  島には椰子(やし)の木一本生えていなかった。見渡す限り平らな土地が広がっている。所々に緑の(つた)のようなものが這っていた。  浜に降り立ち、ネクトンは我が目を疑った。地面がきらきらと光っている。桃色に水色、黄色に紫。色とりどりの粒で埋め尽くされていたのだ。 「すごい、七色の砂浜だ」 「いや、砂じゃない」  フンペが言い、片膝をつく。蔦のように見えたのは、緑色の漁網(ぎよもう)だった。フンペが手を伸ばすと、網は触れたそばから砕け散った。緑色のプラスチックの屑が、陽の光を照り返して輝いている。  二人で小高い丘を登る。ネクトンはすぐ、この島がおびただしい数のごみの集まりだと気付いた。足元に目をやれば、お菓子の袋やペットボトルが見つかる。漢字が書いてある物もあった。彼は気を落とした。 「どれもこれも、食べかすと飲みかすばかりじゃないか!」
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