「2023/1/13[転校生]」

1/1
前へ
/15ページ
次へ

「2023/1/13[転校生]」

 その、彼女の第一印象だけでも。 「こちら、今日転校してきた、新宮神楽くんだ」  男子の目を釘付けにするほどの、綺麗な子。 「新宮神楽です、よろしくお願いします」 ――ヒュー、ヒュー!!―― ――……きょ、巨乳ちゃん!?――  と、いう男子の声も。 ――ちょっと、アンタ達!!―― ――いきなり女の子の転校生に、ゲスい言葉、言うのは止めなさいよー!!――  と、怒る女子達の声も解るほどの、美麗な転校生。 「そうだなぁ、では……」  ただ、担任の隣にたたずむ、彼女の綺麗な顔には。 「……」  何も、表情というものが無いのが。 「……そういう、子なのかな?」  少し、僕には気になったが。 「小田切の隣が空いているな?」 ――えっ!?――  よりによって、僕の隣の席。 「いいね、新宮くん?」 「は、はい……」  と、彼女はしとやかに、そう頷き、そして。  スゥ……  先の言葉遣い、その僕の近くに寄ってくる、静かな足運びも、しとやかとしか、言いようがない仕草で。  スゥ、サァ…… 「……あの?」  そっと、その彼女は僕の隣に佇み、そして。 「……あの、ここに」 「……!?」  僕に向かって、表情が無いまま、鈴がなるような声を、掛けてくる。 「ここ、座っても大丈夫かしら?」 「えっ、ああ……」  と、そう彼女に言われても。 「う、うん……」 「……失礼するわね?」  当然、そこは彼女の席だ。 「……」  朝のホームルームの光りに輝く、綺麗な、流れる黒髪、どことなく気品のある立ち振舞い。 ……コッ  その彼女が、席についてシャープペンを握り。  カ、サァ……  簡素な鞄から、ノートを出すだけでも。  フゥ、ア…… ――……!?――  何か良い匂いが、僕の鼻を差すような気がする。 ――これが、オンナの匂い?――  そして、教室中の男子生徒が、僕を羨ましそうに見詰めていて。 ――よりによって、何で小田切の隣に……――  加えて、それと同じ位に強い視線、それらを女子達が彼女に向けて。 ――何か、無愛想な子ねー……――  と、投げつけると共に、そのヒソヒソとした声に合わせて、はっきり言って、なんか。  ジィ、トゥ……  怖い視線で、この転校生の子を、見詰めている…… 「……この現象は、社会史とも密接に」  だけど、始まった先生の授業が、全く僕の耳に入らなくなるほど。  カッ…… 「……」  本当に、ノートにペンを走らせる姿すら。  カッ、リィ……  綺麗な子だ。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加