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口付けを
────揺れるロウソクが蜃気楼のように影を揺らした。
使い古された床が軋む音と共に文を書く人物に近づく影があった。
「なら………なら恋焦がれる事は烏滸がましいだろうか」
そう口にした彼は返事を返す前に触れるだけのキスをした。
「…忘れてくれ」
顔を見せないまま隠れるように外へ出ていく様を目で追いながら、熱くなった唇に指を当て
書きかけの文は墨を吸い、読めなくなってしまっていた。
「……烏滸がましいのは……私だと言うのに…」
浅ましい想いを、願いを彼に抱いていて近づいたのは私だと言うのに彼は自分が浅ましいと思ってしまっている様だ。
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