青頭巾

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「あんな鬼に手こずっては先が思いやられますよ隆文」 送り人としてまだまだひよっこである隆文はバツが悪そうに首元を掻く 「霊力の練りは申し分ないですがやはり筋力がまだ足りませんね、喰姫の速さに追いついていません」 速さや筋力を増やすことは生存を高める事になる 鬼の目を持っている良元はその血肉のせいで普通の人よりも頑丈な為、見た目よりも力が強いが鬼の血肉を身体に取り入れるという事をすれば普通はメリットよりもデメリットの方が多くなる。 送り人に良元のような鬼被りが居ない理由でもあるのだ 「そうですね…もう少し連携を上手くする為に喰姫に合図を覚えさせる……なんて事をしてもいいかもしれません」 「あぁ……合図か…いいな」 想い人は普通の人間よりも思考が遅く、喰姫のように比較的感情豊かな想い人は珍しい。彼女は簡単な合図と動きは楽々と覚えれるだろうと良元は踏んでいる。 隆文達は相手の想いを叶えて送るよりも強制的に送る方法が理にかなっている…しかしまだそれをするには実力が不足していることも否めない。 「本当は貴方も陰陽師達みたいに符を…」 「いやだ」 食いつくように即答されついつい笑いが鼻から抜けてしまった。即答する程符を書くのは嫌だと言うのは分からなくもない、小さめの紙にきっちりと文字を収め無ければならないのは大雑把な隆文には無理だろう…肩に頭を預けている青年を見ながらこの子に霊符を書かせようと心で呟いた。 この青年は字がとても綺麗な為記憶を無くす前はきちんとした教育を受けていたのだろう、正直良元が書く字よりも綺麗なのだ。 良元も字が書けるとはいえそもそもが下人な為そこまでしっかりとした教育は受けていない 字が書けるようになったのも撫子の父に拾われ当時まだ幼かった撫子と共に字を習ったのだ。 「私も流石に霊符の書き方は分からないのでやはり屋敷に通わせて覚えさせる必要がありますね」 「大丈夫だ、暫く坊主は屋敷に住む羽目になるからその間に覚えさせればいい…覚えるのが早いからな」 にこやかに頷く、治療させる為には良元の家で大人しくさせるよりも屋敷で治療してもらった方が治りが早いだろう。 建物から出て薬屋へと向かう、何日かは薬屋で見た方が休憩も出来るため都合がいい。 屋敷で働く者は大抵が霊力を持った人であり霊力を持たない彼は主に符書きになるだろうが鬼の匂いが新たに着いたままの彼をずっと屋敷に置いておくことは出来ない。 「早くこの鬼の匂いが消えて私の匂いが着くと良いんですけどね……」 すんすんと鼻を鳴らせば呆れた顔で隆文が咳払いをする。 「…変な意味になるからそんなこと口走るな」 呆れたように言う隆文に理解が出来ず眉を曲げる、そのままの意味なのだがなにを勘違いすると言うのだろうか…と少し考えるが難しい事を考えるのが苦手な良元はまぁ…どうでもいいかと気にしないことにした。 ──────暫く歩き続けて薬屋に着いた頃には辺りは明るくなっていた。 結局一睡もしていないが送り人は2、3日寝ないことなんてざらである。 大慌てで桶や手拭いを用意している薬屋の奥方に礼をのべながら青年を横向きに寝かせ帯に手をかける。 するりと帯を解き肌着の下を除くと青黒く変色したり赤くなっている所が見て取れた、素早く紙に何かを書くとそれを奥方に見せる 「奥様、この紙に書かれているものをお願いします。」 「分かりました…」 持ってきて貰った手拭いで血や汚れを拭いていくとやはり痛いのか眉間に皺をよせている。 奥方が持ってきた薬草をすり鉢で水分が出るまで擦った後蘆薈(あろえ)の肉厚なその葉肉の部分の一部を混ぜ合わせ、作った半透明の軟膏のようなものを身体に塗って上から布をあてる。 「痛みを和らげる塗り薬です。冷たいですが我慢してください」 すーすーと水に触れた皮膚が風で冷たくなるような感覚と共に気持ち程度であるが痛みが和らぎ青年の顔は少しだけ安らかそうだ。 骨が折れている…もしくはヒビが入っているであろう場所にも同じようなものを塗り、添え木をしてぐるぐると巻いていく。 「2、3日は様子見をしましょう…恐らく熱を出すことでしょうし今のうちに薬と粥の準備を…」 「わかった。」 良元が言った通り、その後の青年は高熱を出したのだった。
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