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青年が目を覚ましたのはそれから5日の事だった。
目を覚ました時には牛車に揺られていて寝ている間に移動したのだと悟った。
青年が眠っている間、粥は少しずつ口に運ばれ茶碗一杯食べ終わるのに3刻もかかっていた、青年の目が覚めても良元は自分で食べさせる事は愚か、起き上がることも許さず青年は良元にされるがまま粥を食べさせられた。
良元が『粥』という言葉を言う度に青年は顔を強ばらせるが何故そんなに粥という言葉に過剰に反応してしまっているのかは分かるはずもない。
屋敷へと到着すると青年は屋敷の奥にある治療室へと運ばれ絶対安静と釘を刺された。
ひと月程安静にしていれば動き回っても良いと言われた為、言われるがまま大人しく横になっていた。
良元は屋敷へは頻繁に行くことが出来ないが夜中にこっそりと屋敷へ入り青年の様子を見たりしてはいたが、撫子にコソコソ煩いと言われ鬼狩りに追いやられてしまったようでここ数日は見ていないが、代わりに隆文が様子を見に来ている。
そして数日が経ったある朝、青年が目を覚ますと目の前には髪が長く、嶺麗しい顔が間近くで目を閉じて横たわっていた。
「え……」
ごしごしと目を摩るも見たこともない程綺麗な人物は消えない
「えっ!?」
同じ掛け布団に入るその人物をよくよく見れば何も着ていないのか肩が丸出しだった
「だ……だれ!?うわッ酒くさ!!」
寝ている人物からとてつもない酒の匂いが漂っている、酔った勢いでこの布団に入り込んでしまったのだろう、一応確認のため自分の服を見るがきちんと服は着ている為青年はホッと一息ついたのもつかの間ついつい見てしまった胸元には膨らみは無いのが見えた。
つまりこの見たこともない程綺麗な人物は男なのだ。
「どうした?騒がしいぞ」
ちょうど今来たといった感じで入ってきたのは隆文だった。隆文は布団の上でギャーギャー騒ぐ青年に煩いぞという意味で耳穴に指を詰めながら近づいてきた。
そして隣で眠る嶺麗しい人物をみて心底嫌そうな顔をした
「うわ……」
頭を抱えどうするか悩んでいる様子だ
「起こした方がいい?」
そっと肩に手を乗せようとすると隆文は必死に止めてきた
「ダメだ…触るな…イカレ頭が移るぞ」
「イカレ…」
こんなに綺麗な顔なのに?と覗き込む
光の加減かと思っていたがどうやら髪が綺麗に半分だけ老婆のように真っ白だ、艶があって蚕の糸のように滑らかな手触りだった。
相当良い香油を使っているのだろう…そこら辺の女性の髪よりも上質である。
「酔った勢いでここに寝やがったな…つかなんで裸……」
ぺらりと隆文が腰あたりの布団を捲り、何も言わずにまた被せた
(下着も脱いでるのか…)
青年はその行為で全てを察した。
「起きる前に回収してもらわねぇと色々とやべぇからな……頭に話してくる…いいか?絶ッ対に起こすなよ!」
あまりの気迫にこくこくと頷くしかない青年を満足そうに見て隆文は走り出した。
動くと起こしてしまう可能性を考えると青年は石のように固まったが少し経てば隣の男がモゾモゾと何かを探すように抱きついてきたのだ
「ひぇ……」
横腹から腹、そして胸元へと手が伸び胸を探すように手を動かすとピタリと動きを止めた
「あ゛ァ????」
ドスの入った綺麗な顔に似つかわしくない声がその口から発せられ青年は冷や汗をかきながら石のように固まるしか無かった。
数回さするように手を動かしたあと首を傾げその綺麗な顔についた目が少しだけ開かれた
「ンだ??…おとこぉ??んぁ………んが」
寝ぼけているのか男という単語しかハッキリと喋っていない
「ン〜……ヤッた…きおく…ねェんだけどなァ」
舌っ足らずな状態で変に言葉の端々にドスが効いている、耳に残るような声でボソボソと呟きながら寝相で少し解けかけた青年の帯を解いていく
(え!?何やってんだこの人!!?)
「男でも……おンなでも………どッちでもイい………ん……んがッ」
こくりこくりと首を揺らしながら眠そうに上に乗ってくる
「そ……そこまで眠いなら寝たら…どうですか?」
このままでは色々と危ないと感じで優しく問いかけるとその男は青年をみてにへらと笑う
「寝るかァ……?」
瞬時に違う意味で捉えられたと察した青年は冷や汗を流しながら早口でたしなめようとする
「あ、あのですね!そういう意味の寝るでは無くて睡眠の方でして!!ちがッ!!服を脱がそうとするんじゃない!!」
「シた後に寝た方がよォ……最高に気持ちいいンだよ……」
「そんな情報いらない!!!ちょっと!!!誰か!?隆文さん早く戻ってきて!!!!」
綺麗な顔に似合わない怪力で強引に服を脱がそうとしてくるのをまだ痛む身体で抵抗する。
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