最後の呟き

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 地面のそこここに、損傷の程度こそあれスマートフォンが散乱していたのである。持ち主を奪われた薄い板が、みな一様に黒い液晶を曇天に向けて寝そべり、虚無に侵食されて沈滞していた。  ──。  平間の右手親指がグギグギと不規則に動き、呟きの文章を打ち始めた。 『お前』  無駄だと知りつつ抵抗を試みた。が、ぶるぶると指は震えるばかりで乱雑な文章を打つことしかできなかった。 『お前たならはやわわ』  親指は平間の意思とは相反して冷静にデリートキーに触れ、またも正しい文章を打つ作業に戻る。 『お前を、』  昇也もこんな風に抗ったのだろうか、と憐れみと諦念を胸に注ぎながら平間は口から疾駆した後の犬にも似た息を吐いた。 『お前を、許さない。』
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